_blank
     
4月 早春の森
【北の国からのエッセイ】 2009年04月03日

先月29日、札幌の積雪がゼロとなりました。ほぼ4ヶ月間付き合った雪ともお別れ、いよいよ春です。

カレンダーが一枚めくれた4月1日、春の証を求めて郊外の野幌森林公園に足を運びました。この時期は森に入る服装に迷います。確かに気温は氷点下を脱しましたが、かといって暖かいと言えるほどの気温ではありません。森にはまだ残雪もあるだろうし、ぬかるんでいるのではないかとも思います。結局、風の冷たさも考慮して、やはり冬の服装で森に入り、靴も長靴にしました。

原始の森
雪のない都心を長靴のまま地下鉄とバスを乗り継いで1時間、野幌の森につきますと、まだ白色が優勢の世界でした。けど、積雪は15cm前後、ところどころ青いササがでています。また、トドマツなどの常緑樹の下の散策路は、もともと雪が少ないため早くも土が顔を出していました。足元は時々ズブズブと沈みますが、風も弱く、とても気持ちのよい森林浴です。

春を待ち望む人たちは、首をすくめてでもコートを早めに脱いで歩きがちです。この日の森はちょうどコートを脱いだ森のようで、森自体が春を待ち望んでいるように思えました。野幌森林公園の大沢口付近は、明治の開拓以前の面影を残す原生林が残っている数少ない地域と言われています。ヤチダモ、カツラ、シナノキなどの自生樹があちこちに見られます。

上の写真のカツラは真ん中の大木の親はすでに朽ち、萌芽更新といって回りに子供が育っています。子供といっても、すでに100年近くは経ってるでしょうか。いまでこそ人口190万人、全国で5番目の大都市になった札幌も、140年前はこうした原生林が広がっていたんだろうなと思いながら歩きます。

春の証
散策路脇でフキノトウが1個顔を出していました。「わあ、フキノトウだ」歓声があがります。今年初めて観察する野の花第一号です。(写真左)「これはオスだ」フキノトウは雌雄異株です。「メスよりオスがいつも早いんじゃない?」あと10日もすると数え切れないくらい咲くフキノトウで、誰も見向きもしませんが、はしりとなるとわずか一個でも話が弾みます。




南向きの斜面にフクジュソウが咲いていました。(写真右)まだ小さいですが、黄色い花が太陽に向かって顔を向けていました。旧暦の正月ころに咲く黄金色の花なので、「福告ぐ草」から「福寿草」となりました。

近づくと早くもハチが留まっています。フクジュソウの真ん中は温度が周囲より高いです。蜜を持たないフクジュソウは、温度を高くして「虫さんおいでおいで」と虫を集め、子孫を残します。自然の神秘的な造作です。

散策路の溝の湿地に、ザゼンソウが顔を出していました。ミズバショウと同じ仲間ですが、花を包む仏炎包はミズバショウは白色であるのに対し、ザゼンソウは暗紫褐色です。真ん中の花が座禅を組んでいる禅僧のように見えることから、この名がつきましたが、この日観察された初物のザゼンソウは、まだ入り口が割れていません。スカンクキャベツといわれるほど悪臭をだす植物ですが、まだ肌がツルツルした赤ちゃんでした。



目覚まし温度
木の芽も膨らんできました。ナナカマドの冬芽も鋭く尖って、赤く大きくなっています。(写真右)

植物が活動を始めるのは、気温が5度を越えてからといいます。気象台が発表する毎正時の気温を足して24で割りますと、一日の平均気温が出ます。3月に入って毎日計算・記録していますが、27日0.8度、28日0.7度、29日3.3度、30日2.4度、31日2.3度、そして4月1日は2.9度。三寒四温です。徐々に平均気温は上がり、あと10日もすれば5度を越す日も出てきます。


4月下旬からは、カタクリやエゾエンゴサク、アネモネなどの春植物が一気に咲くことでしょう。

この日は3時間森を歩きましたが、観察できた花はフキノトウ3個、フクジュソウ2個、ザゼンソウ1個だけでした。けど、久しぶりの森歩き、北国の遅い春ももうすぐだと思うと実に気持ちよい散策となりました。

冬が長ければ長いほど、春への期待は高まります。(完)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。