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春の装い
【北の国からのエッセイ】 2009年04月20日

4月も半ばを過ぎて、札幌は急に春めいてきました。頬をなでる風が、これまでのひんやりとしたものから、温かみの感じる風に変わっています。人も含めて生き物の動きがダイナミックになってきました。長かった冬の衣を脱ぎ捨て、待ち望んでいた北国の春がやってきました。

札幌の啓蟄?
札幌の中心部大通公園を歩きますと、人の動きが様変わりしてきたのに気づきます。

冬の間休んでいた噴水がまだ出てないのに、市民は噴水の周りに腰掛けて、柔らかい日差しを楽しんでいます。

ご婦人は待ち合わせなんでしょうか。それとも買い物の途中の一休みでしょうか。若者が座っている姿は、外回りの営業のサラリーマンが、仕事どころではないよと腰をかけているようにも思えます。遠くに目をやっている年配の男性もいます。何を思って座っているのでしょうか。暖かくなって市民がうごめき始めました。



ベンチが急ピッチで取り付けられています。まだボルトで締められてない置いただけの背もたれに、待ちきれない市民は腰を深く落として、春の匂いをかいでいます。

日の光がとてもありがたく感じられます。市民はすべての人を包みこむような太陽の恵みを、一杯に受け止めています。「すみません。ベンチをとりつけますので・・・」作業員が声をかけて、男性は腰を上げました。


化粧つくり
花壇作りも始まりました。造園業者が、花壇の枠を作って土を起こし、花を植えていきます。

この時期植えられるものは寒さに強い、パンジーとデージーばかりです。それでも赤・白・黄色・紫・・・色の種類が豊富です。冬の間鉛色だった大通公園が色づき始めました。まるで口紅をつけたようです。町が一気に躍動し始めました。

16日朝雪がちらつきました。寒の戻りです。 午前中気温が4度しか上がりません。とても寒く感じます。氷点下が主流だったつい1ヶ月前は、最高気温が4度まであがると、とても暖かく感じました。いまは逆です。寒い・暖かいはあくまで相対的なものだと強く感じます。

「札幌の人は薄着なんですね。こんなに寒いのにコートを身に着けないで歩いているのにびっくりです」観光ボランティアをしていると、本州から見える観光客からよく聞かされます。沖縄に12月に行くと気温が15℃なのに「寒いですね」が挨拶の言葉だそうです。札幌では15℃になれば、湿度が低いこともあって快適な「軽井沢」です。


躍動の兆し
公園の木々にも動きが見られました。高木ではいち早く咲くキタコブシが、つぼみがほぐれて白い花を出し始めました。(写真下左)

千昌夫ではありませんが、コブシが咲くと「北国の春」を強く感じます。

モクレン
がおちょぼ口を突き出すように、紫色の衣を少し出し始めました。(写真下右)

 

キタコブシとモクレン、いずれも早春を代表する樹の花です。同じ科の木ですが、キタコブシは健康的な乙女が手足を精一杯伸ばすかのように全開するのに対し、モクレンはお色気のある人妻が楚々と歩くかのように咲き、全開しません。あと4~5日すれば満開でしょう。この時期大通公園を歩くのが楽しみな花です。

本州ではとうに散った桜は、札幌ではどうなっているんでしょうか。札幌はエゾヤマザクラが主流ですが、本州のソメイヨシノが大通公園には3本植えられています。

近づいて観察しますと、う~ん まだつぼみが固いです。札幌管区気象台によるとソメイヨシノが咲くのは5月1日頃だそうです。ただ、圧倒的に多いエゾヤマザクラはソメイヨシノより1週間ほど早く咲きます。

気象台が開花の目安にしているサクラの木、これを標準木といいますが、札幌ではソメイヨシノですので、開花宣言があったときは、すでに札幌はエゾヤマザクラが満開です。


市民感覚からずれている気象台の発表と、それを鵜呑みにして「ようやく札幌にもさくら前線到着」と報じるマスコミも、実態を見て伝えてほしいと思います。

この写真をご覧ください。

右側のたくさんつぼみのついている木がソメイヨシノで、気象台の標準木です。この標準木は北海道神宮境内にあります。この日数輪つぼみが開いて花が咲き、気象台は「開花宣言」を出しました。この標準木の隣、写真の左側にエゾヤマザクラがあり、枝が標準木のソメイヨシノと交錯しています。

このときのエゾヤマザクラはごらんのように、もう満開でした。2006年5月8日の開花宣言が出た日の写真です。


札幌を代表する花、ライラックの芽が一段と大きくなって来ました。

対生の木の芽は青空に向かって小動物の耳のようにふくらみ、まもなくおいらの出番だよと言っているようです。この芽から甘い匂いをだすふさふさしたライラックの花がでてくるんだと思うと、楽しく待ち遠しくなります。



大通公園は先発隊のキタコブシ・モクレンが咲き終わると、サクラやレンギョウ、地味ながらもハルニレ、カツラなどの花も咲き、まもなく百花繚乱の季節を迎えます。

噴水もまもなく出始め、ワゴン車による名物トウモロコシの販売も始まり、いよいよ下旬観光シーズン幕開けです。
(完)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。