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オランダ田舎見聞記(上) ~ 平原の国 ~
【北の国からのエッセイ】 2009年08月28日

オランダには山がないという。ほんとかな、山がない国はへそのないカエルみたいだな。 ドイツやベルギー国境あたりには、丘ぐらいはあるのではないだろうか。こう思って標高がわかる地図を広げてみると、茶色は見当たらず、みな緑一色に塗りつぶされている。

この夏、オランダに2週間滞在した。確かにオランダを縦断しても、はるか向こうに山がかすんでいるという光景は見られなかった。代わってあちこちにあったのは、運河である。それも、水が川面一杯に満ちており、しかもほとんど流れがない。オランダは平原の国である。


酪農王国
オランダの首都、アムステルダムから列車に乗って、北に向かう。車窓から見える風景は平らで、波打ってはいない農地ばかりである。どんなものを作っているのかなとじっと観察していると、大半が牧草地だ。全体の7割が牧草、2割がトウモロコシ、1割が小麦であろうか。

もったいないな。こんな豊かな農地を牧草地にするなんて、ジャガイモや換金性の高い野菜類などを作ったらいいのにと思った。北海道では牧草地はどちらかというと、他の作物ができない地域が多い。

同行者にこうつぶやいたら、それは日本的感覚ではないかと指摘された。オランダの農業は大別して南部が園芸農業が主流であるのに対し、北部は酪農であるという。滞在中オランダを2往復縦断したが、北部は行けども行けども、牧草地である。北海道東部を走っているようだ。

牛の群れがのんびり草を食んでいる。酪農王国オランダを実感する。牛の他に馬も放牧されている。近くに調教用馬場があるわけではなく、競走馬という感じではない。何のために飼育しているのかな。先進国ではいまどき農耕馬の時代ではないし・・・サクラ肉用かなと思って現地の人に聞くと、観光用の馬車などイベント用に馬は結構需要があるという。牛ほどではないが、馬の放牧も結構散見され、牛一色の景色にアクセントをつけている。

グロニンゲン
列車に乗って2時間半、グロニンゲンに着く。人口18万人。オランダ北部の中心都市である。日本の地図などではグロニンゲン(groningen)と記されているが、オランダ語ではフローニンゲンと空気が漏れる発音だ。けど、(エロ)グロニンゲンと親しみ?やすく、覚えやすい町である。

当地で行われたイベントに参加するため、2週間滞在した。8月上旬、日中の気温は高いが湿度が低く、木陰に入ると涼しい。札幌の気候によく似ているが、緯度が高い分、札幌より少し涼しい。札幌では9月に色づくナナカマドの実がすでに赤い。

市民は短い夏を楽しもうと、湖にヨットを浮かべ、芝生では大胆なポーズで日光浴をしている。水車が残っており、オランダのにおいがする。湖畔のマンションのベランダは広く、住人は椅子に座って雑誌を読みながら日光を浴びている。

小さな町にしては、湖に立派なヨットハーバーがあり、市民の生活レベルの高さを感じる。ただ、食事はお世辞でもおいしいとはいえない。

事前に読んだものに「オランダでは空腹は満たせるが、おいしいものはない」と書かれていたが、その通りだ。ホテルの食事は初日だけで敬遠し、ローカルレストランを探したが、結局中華料理屋に何度もお世話になった。

自転車の町
そこのけ そこのけ 自転車が通る

オランダは自転車王国だ。 とくにグロニンゲンの都心では、自転車がわがもの顔に行き来する。道路には歩道の他に真ん中に自転車道がある。(写真右)

赤色にアスファルト舗装されている。車が小さくなって自転車を避けて走っている。確かにオランダには山坂がないので、自転車には便がよい。当局に尋ねると、都心を4つの区域に分けて、他の区域から車が直接入れない規制をしているという。車は一旦大外の環状線に出てから、都心の他の区域に入るようになっている。

こうした車乗り入れ規制の結果、市民は自転車で都心を安心して走れるようになっている。市の交通関係の予算の40%が自転車の環境整備費であるという。

赤いアスファルト舗装の自転車専用道路は都心だけでなく、郊外でも湖畔でも目につく。赤いアスファルト舗装を歩いていると、「そこは自転車道路です、歩道を歩きなさい」と何度も注意された。写真の道路左が自転車道、右が歩道である。ぜいたくな道路だ。

自転車の群れというと、ひと頃の北京の通勤時間帯の自転車ラッシュを思いだす。グロニンゲンの自転車はもちろん通勤もあるだろうが、買い物に、サイクリングにと広く使われている。

グロニンゲンでは自転車文化に関する国際会議も開催されたことがあるという。まさにグロニンゲンは自転車の町だ。(つづく)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。