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大通公園100年(2) ~命はぐくむ街の緑~
【北の国からのエッセイ】 2009年09月14日

大通公園は2つの顔を持つ。

一つは文字通りの公園。都市公園法に基づく公園で、日本の都市公園100選に選ばれている公園でもある。もう一つは道路交通法に基づく道路で、大通公園は大通という道路の巨大な中央分離帯でもある。

このように、道路と公園の二重の性格をもつ大通公園は、全長1.5kmの細長い公園となっている。

次々に咲く花
大通公園には、大小あわせ約90種、5,000本の木がある。都心のど真ん中にあるこれらの木々は、札幌が緑の多い町であることを強烈に印象づけている。

5月、大通公園では花が一斉に咲く。春の到来を告げる白いキタコブシ・濁りのない黄色のレンギョウ・ピンクのエゾヤマザクラと、長かった冬を忘れさせるように公園は華やかになる。
(写真右の3色)


6月に入ると、札幌市の花・ライラックが公園のあちこちに咲いて甘い香りを漂わせる。(写真左)

ライラックは1丁目から12丁目まである大通公園で、2丁目を除いてすべての区画で植えられており、あわせて380本ほどが一斉に咲く。花の色も、濃い紫から薄い紫、青、白とさまざまだ。1年で一番良い季節だ。

ライラックはフランス語でリラといい、梅雨のない札幌では、天気は良いけれど気温が低い状態をリラ冷えと言っている。俳句の季語にもなっている。

ライラックに続いて、ソフトクリームのようなトチノキ、白いリボンがハーモニカ状に可憐に並ぶハクウンボク(写真下左)、チューリップのようなユリノキ(写真下右)など個性のある花が咲く。

とくに、若草色のコップにオレンジの透かしが入っているような、気品のあるユリノキの花は、高い梢に上に向かって咲く。10円玉でも落ちてないかと下を向いて歩いてばかりいると見落としてしまう。

 

夏は花が一段落し、ちょっと寂しくなるが、ヤマボウシに続いて存在感のある韓国の国花・ムクゲ(写真下左)が真夏の公園を彩る。色も白からピンクまである。
そして8月下旬、壁泉を伝うようにノウゼンカズラがラッパ状の花を咲かせ、大通公園の木の花は終わる。
(写真下右)

 

花が終わると木々の葉は色づく。ケヤキ・イチョウ・イタヤカエデなどの黄葉、ヤマモミジ・サトウカエデの紅葉などが公園を彩り、初雪を迎えることになる。(写真:2007年11月9日)

大通公園で四季を追うと、一年はとても早い。とくに秋から冬にかけては駆け足でやってくる。北海道の屋根、大雪山系では、早くも初雪の便りが聞かれた。

札幌は四季がとてもはっきりしている町だ。

大通公園をウォーキングガイドすると、観光客から、この花は何ですか、この木は?とよく聞かれる。

今年札幌商工会議所が、観光客向けに、ポケット版の都心ガイド「さっぽろ・てくてくのテク」を作成した。(写真左)
この中の大通公園と都心の街路樹の植物のコーナーの作成をお手伝いさせていただいた。

植物だけでなく都心の隠れた見所を紹介しており、観光案内所や主なホテルのカウンターに置かれているが、すぐ底をつく。

本州からの観光客だけでなく、札幌市民がよく手をだすという。

立ち入り禁止の先入観念
「大通公園では、なぜ市民が芝生の上に入っているのか」本州の観光客によく聞かれる。どうやら芝生の中には入っていけないものだと思っているらしい。

基本的には芝生の種類が本州と北海道では違う。本州では温帯向きの和芝(日本芝:おもにコウライシバ)であるのに対し、大通公園では冷温帯向きの洋芝(西洋芝:おもにケンタッキーブルーグラス)が使われている。コウライシバは冬枯れるが、ケンタッキーブルーグラスは冬でも枯れない。もともと牧草として導入したものが芝生に転用されたいう。

大通公園でも芝生の張替え直後では立ち入り禁止になる。けど通常は立ち入りOKだ。(写真右:6月頃)

ここで大切なのは、芝生はもともと見せるためでなく、人が入ってくつろいでもらうのも目的の一つだということだ。サッカーなどはしては困るけれど、通常座ったり横になったりする限りでは芝は問題ないという。

コウライシバのゴルフ場をプレイヤーがどんどん歩いているではないか。芝生=立ち入り禁止の考えは、管理する側の論理が優先している結果で、従順な日本人はそれが当たり前だと思って従っているだけだ。もし立ち入り禁止にするくらいなら、芝生でなく植樹や花壇にでもすればいいと思う。

緯度の高い札幌は日光を受ける機会が本州と比べてはるかに少なく、直射日光が厳しくない限りは、ヨーロッパに見られるように芝生の上でくつろぎ、日光浴をするのはむしろ自然なのかもしれない。

イギリス人は「芝生に入るな」と書いてなければ入る。ドイツ人は「芝生に入ってもいいですよ」と書いてなければ入らないそうだ。日本人はというと、芝生が何のためにあるかを考える前に、お上優先の論理が先行している。芝生一つで国民性がよくわかる。

こうした木々の緑や花を大切にし、改めて大通公園を見直そうという動きが、公園となって100年の今年出てきた。(つづく)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。