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秋たけなわ
【北の国からのエッセイ】 2009年10月29日
北国 北海道の山々はすでに白くなっています。平地でも道北や道東、さらに内陸部はもう晩秋です。峠や山間部では雪の便りも聞かれ、アイスバーンに注意という交通情報が、天気予報でよく聞かれます。

そして札幌を中心とする道央から道南は、今が紅葉真っ盛り。札幌市郊外の低い山々は錦絵の絨毯となっています。

さすがに広い北海道ですが、9月中旬から始まった紅葉の見ごろはあとわずかです。この10日間ほど毎日のようにでかけ、紅葉を見て歩きました。

都心の紅葉
札幌の中心地、大通公園です。テレビやグラビアでは、テレビ塔にあるカメラから見る大通公園がよく紹介されていますが、反対側にカメラをすえて撮った大通公園が左の写真です。(写真左:10月21日撮影)

真正面にテレビ塔がかすんで見えます。ヤマモミジが赤く映えています。秋の深まりを感じさせます。春、葉の芽だしから始まった広葉樹にとって、秋の紅葉はこの半年間の光合成の営みが終わったことを意味します。

ベンチでじっと紅葉を見ている人もいます。何を思ってるのでしょうか。 大通公園だけでなく、札幌市内の公園は、いずれも今が一番の紅葉の見ごろです。

野幌森林公園
札幌郊外の森に入りますと、落ち葉が一杯です。(写真右:10月14日撮影)
さらさらさら・・・
とくに靴を引きずっているわけでもないのに、落ち葉の擦れる音が心地よく響きます。落ち葉も靴よりも大きいホオノキの葉から、小さいナナカマドまで大小さまざまです。

ハート型のカツラの葉もたくさん落ちています。拾ってちょっと揉むと甘い匂いがぷ~ん、昔懐かしいカルメラの匂いです。

赤くなる葉はハウチワカエデやツタウルシなど、お馴染みのものが多いのですが、この日はちょっと珍しい紅葉を観察しました。

小豆色で、葉が規則正しく下を向いてしっとりしており、周囲の黄色の中ではとても目立ちます。(写真左)

なんだろう。
散策路から少し中に入って近くまで行った女性が「わかったわ」。
ヌルデ
です。ウルシの仲間で、葉の軸に翼がついているのが大きな特徴です。また葉の形が、枝全体で一つの葉という羽状複葉です。

北海道にはツタウルシ・ヤマウルシ・ヌルデの三種類のウルシが自生しています。このなかで、観察する機会がもっとも少ないのがヌルデでしょうか。余り見たことがないヌルデの紅葉が見られたと思うと、新しい発見をした気持ちになり、何度も訪れている森でもとても新鮮に感じます。

恵庭渓谷
支笏湖(しこつこ)に近いところに恵庭(えにわ)渓谷があります。土砂崩れで通行止めでしたが、幸いなことに開通したばかりでした。恵庭渓谷には3つの滝があります。このうち三段の滝は水量も多く豪快で、真赤なもみじが鮮やかです。(写真右:10月11日撮影)

札幌から車で僅か1時間のところですが、今回初めて訪れました。近いところでもこんなに素晴らしい紅葉の名所があるとは知りませんでした。途中急に暗雲たちこめ、あられが降りましたが、しばし見とれました。

箱館戦争古戦場
ぐっと南下して、函館の隣の北斗市 大野地区です。週末泊り込みで函館方面に行ってきました。

目的は紅葉鑑賞ではなく、箱館戦争の足跡を辿る旅だったのですが、古戦場はいずれも紅葉・黄葉で覆われていました。

明治2年4月、榎本武揚率いる旧幕府軍を討つために北海道南部に上陸した新政府軍を、函館に入る要衝・大野地区二股口で阻止しようとしたのが、あの土方歳三です。

箱館戦争の中の激戦地の一つとして、土方の活躍が語り継がれている古戦場でもあります。多勢に無勢の土方軍は、向って来る新政府軍をぐっと引き寄せては、台場山から一斉射撃を、顔が硝煙で黒まみれになるまで撃ち続けて撃退しました。

研究者以外は余り入らないという台場山入口の二股口で、案内してくれた地元の郷土史研究家は、「誠」と記したゼッケンをお腹につけて私たちを歓迎してくれました。なんとなくユーモアが感じられます。

シノピリカ いづこをみても 蝦夷の月

蝦夷の月はどこから見ても本当に美しく、ここから見るのはまた格別だ。俳号をもつ土方歳三が、台場山で詠んだ一句だそうです。

紅葉宣言
春、気象台は標準木のサクラの花の咲き具合を観察して開花宣言をします。秋にも、気象台は「紅葉しました」という紅葉宣言をします。サクラは数輪咲くと開花宣言が出されますが、紅葉宣言は標準木が80%紅葉したら出すのだそうです。

札幌では標準木がヤマモミジで、2本、知事公館内にあります。20日、見てきました。(写真左)
すると、もうすっかり紅葉・黄葉しているように見えました。真中の黄色と赤の2本の木が標準木です。気象台に問い合わせますと、「まだです」。

私も毎年観察していますが、去年より紅葉は進んでいるように思えました。けど気象台の担当者曰く、「80%はあくまで観察者の判断です」。
あと1両日中には紅葉宣言となるでしょう。ちなみに去年は23日、一昨年は22日でした。

札幌はあと1週間もすれば初雪がちらつきます。10月は1年を通して気温の落差が一番大きい月です。暖かい南風が吹いたと思えば、冬の使者を運んでくる北風が吹く日もあります。

まもなく長い冬に向けての準備が始まります。すでに大通公園の名物・トウモロコシ売りは店じまいをしました。
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。