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北の国からのエッセイ
雪のない師走入り
【北の国からのエッセイ】
2009年12月04日
師走に入りました。けど、この冬の札幌には雪はありません。初雪以来の累計の積雪は平年で32cm、少雪だった去年でも26cmでしたが、今年は11月1日にパラパラと初雪がちらついて以来、累計でわずかに8cmです。
札幌市内に雪が積もりますと、市電の除雪のため「ささら電車」が出動します。電車の前部につけた竹箒がぐるぐる回って雪を取り除くもので、札幌の冬の風物詩ともなっています。日記によると去年の初出動は11月21日でした。今年はいまだに一度も出動の機会はなく、車庫で寝てることでしょう。
電飾の輝き
先週から都心の大通公園で、恒例の
ホワイトイルミネーション
が点灯されました。ファンタジーな雰囲気を醸し出し、観光客は歓声をあげています。
けど、雪がなくては暗闇の中の電飾です。普通のネオンを大規模にしたブラックイルミネーションでしょうか。(写真右)夕方の気温も5度を上回って、寒さが感じられません。やはり、頬がぴりりと締まる北風と雪の役者が揃って、ホワイトイルミネーションも活きる気がします。
静寂の森
札幌近郊の森、野幌森林公園に先月下旬2回入りました。一度は自然観察仲間と、一度は1人で入りました。笹にうっすらと雪が積もり、葉はすっかり落ちていました。(写真左)森はエネルギーの消費量を最小限にして、これからの厳しい冬に耐える姿となっています。
先週末に1人で入ったときには、鳥の鳴き声すら聞えません。し~んとして寂しい限りです。別に枝ぶりのよい木を探しているわけでもありません。まだ世を儚んではいません。ただ、年のせいでしょうか、殺風景な景色でもそれなりの趣を感じます。
高木の上に鳥の巣のようなものがあちこちに見られます。
ヤドリギ
です。樹に寄生して生きている常緑樹です。(写真右)立木が落葉すると、遮るものがないだけに樹のてっぺんの常緑のヤドリギが目につきます。双眼鏡で覗いて見ました。赤い実を一杯つけています。
アカミヤドリギ
です。寒さにもまれてもう少し柔らかくなると、鳥のおいしい餌になることでしょう。
5種類の味
散策路から少し入ったところに、樹に絡まったぶどう状の赤い実を一杯つけている植物に出会いました。ツルウメモドキかな。近づいてみますと、
チョウセンゴミシ
です。チョウセンゴミシは山地に自生する落葉性のつる性植物です。野幌森林公園では初めて観察しました。(写真下)この道はもう数十回も通っているのに、なぜ今まで気がつかなかったのか。これも周囲の葉が落ちて見つけやすくなったということでしょうか。
チョウセンゴミシは朝鮮五味子と書きます。赤い実に甘・酸・辛・苦・鹹(かん・しおからい)の五味があると言われています。滋養強壮薬としてしられていますが、漢方では咳止め薬に配合され、生薬名は有名な「五味子(ごみし)」です。数年前、道立衛生研究所の薬草園で、チョウセンゴミシのお茶をいただきました。「5種類の味がする複雑なお茶を味わってください」といわれ飲んだことがあります。
目の前のチョウセンゴミシの赤い実を口にいれてみました。甘酸っぱい味がしました。果実酒は美味で疲労回復に効くといわれています。目の前の赤い実を果実酒にするには、柔らかくなりすぎて皺になっており、時期がすぎていました。よし、来年はぜひ10月に採取して果実酒を作ろう。周囲を見渡し、見つけたチョウセンゴミシの位置を確認しました。
暖冬はもう常識?
つい先日、知り合いのテレビのお天気姉さんが、「本を書きましたのでご覧になってください」と一冊持ってきてくれました。このお天気姉さん、さわやかな語り口で、毎日工夫してお天気情報や歳時記を伝えています。書いた本は「なるほど!北海道のお天気」、お天気雑学エッセーです。この中で面白いことが書いてありました。
札幌の気象観測のスタートは非常に早くて120年前、函館・東京に次いで全国で3番目だそうです。その歴史ある札幌の平均気温が、この100年で2.3度上昇しました。
ただ、1年を通じてまんべんなく上がっているのではなく、平均気温を押し上げているのは1月の最低気温で、実に5.2度も上昇しているそうです。つまり、札幌は夏のさわやかな暑さは昔も今も同じであるのに対し、冬の冷え込みが著しく緩んだということになります。
そういえば、この数年札幌で氷点下10度を下回ったということは聞いたことはありません。札幌の雪の期間は、11月から3月までの5ヶ月と言われていますが、最近は1ヶ月以上短くなっているのではないでしょうか。地球温暖化の影響でしょうか、ことしは雪が遅いのではなく、まだ雪が降らないのが当たり前の時代になったのかもしれません。
森の主に再会
この時期 森を歩くとどうしても気になることがあります。
今年はどうしているのかな。いつもの場所に覗きに行きました。
いました、いました、フクロウ君です。谷一つ隔てた、ハルニレの大木の洞にちょこんと座っていました。「やあ今年もまたお会いしましたね」という気持ちです。
フクロウは一年中この森に住んでいます。人が多く森に入る夏の間は奥地に身を潜めていること、冬になると夏生い繁っていた葉がなくなって見つけやすくなっただけです。それでも、毎年のように1年ぶりに会えると、なんとなく嬉しくなります。去年と同じフクロウか、それとも違うのか、それはわかりません。けど、私にとっては再会です。
この日はたまたま別のところで、フクロウをもう一羽観察できました。森に入ったのが午前10時です。2時間後に戻ってきますと、朝 ササの上にうっすら積もっていた雪はすっかり消えていました。(写真左)(完)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
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