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北の国からのエッセイ
冬の鍋と温泉
【北の国からのエッセイ】
2009年12月08日
師走に入りますと北海道各地の天気予報は、天候が雪だるま、気温は氷点下が当たり前になってきます。
札幌中心部のホワイトイルミネーションは、厳しい冷え込みが凍みるように輝いています。とりわけ最近は、電力消費量が少ない発光ダイオードが主流を占めて、青い光が一層クールさを強調しています。
2日の夜は、これらのオブジェに、もう一つ“自然のオブジェ”が競演していました。コートの襟を立てて歩いていましたが、丸くて大きい自然のオブジェに思わず足を止めました。パチリ。
(写真右)
この日ばかりは、東の空に浮かんでいる満月のほうに存在感がありました。
冬のイベント
寒いときは温泉と鍋物が一番、どちらも味わえるイベントに行かない?
こんなおいしいお誘いを断ることはできません。
12月最初の週末、いそいそ出かけてきました。行き先は積丹(しゃこたん)半島です。札幌からバスで小樽を経て、宇宙飛行士 毛利さんの足跡残る余市を抜けますと、道が険しい積丹半島に入ります。
積丹はアイヌ語で、夏になると漁にやってくる部落・サクコタンが訛ったものです。ということは、冬は厳しい地形と強風で、アイヌの人も近づけなかったところということを意味します。今では海岸沿いのトンネルを何本もくぐって先端の神威岬まで行けます。
積丹半島には春から夏にかけて、エゾカンゾウやハマナスの花園を求めて、毎年のように訪れますが、冬は初めてです。冬に積丹を訪れるという発想がありませんでした。
逆手をとって、冬の積丹で豊かな海の幸と温泉で一日を楽しみませんか。地元観光協会と旅行会社タイアップのイベントです。
名付けて
「どっこい積丹冬の陣」
。 売りは「7種類の鍋物を7杯まで自由に食べられます」。7種類とは三平汁・ソイ鍋・ごっこ汁・ブリ鍋・タラちり・積丹鍋。あと一つは思い出せません。
会場に行きますと、大鍋がずらりと並んで壮観です。これでゆっくりビールで一杯、と思ったのは最初の10分ちょっとだけです。2杯目のお替りに、次の鍋物を求めて席を立ちますと、もう長蛇の列です。
夏に広い牧場などで、こうしたイベントがありますが、冬はどうしても室内です。
座るところがなく、立って食べる人も出てきました。週末ですので大型バスが6台も入ったとのこと、正午めがけてざっと200人ほどが詰め掛けました。こうなると もう芋洗いです。落ち着いて食べられる雰囲気ではありません。
私は4杯食べました。もうおなか一杯です。7杯なんてそんなに食べられるものではありません。味は最高でした。
積丹温泉
温泉に入りました。積丹温泉です。大きな露天風呂がありました。視界がぐーんと開け、日本海が眼下に一望できます。外気はさすがに冷えていてブルル!ただ、この日は波が穏やかです。眼を凝らしますと、日本海に突き出た積丹半島先端の神威(かむい)岬と神威岩が見えるではありませんか。(写真下左:水平線の豆粒、下右:ズームアップ)
江戸時代、日本海を北上して小樽に入る北前船は、必ずこの神威岬を通ります。しかし、古くから神威岬は女人禁制で、これを犯すと船は転覆するといわれてきました。有名な江差追分にも「恨みあるかよ御神威様は なぜに女の足とめる」と歌い込まれています。
~ 源義経を慕って身を投げた日高の酋長の娘チャレンカの嫉妬心が、女を乗せた船を転覆させたことから、岬一帯は女人禁制となった。身を投げたチャレンカはやがて岩となって神威岩となった ~
こう語り継がれています。兄頼朝に追われた義経は、平泉の衣川からさらに北上したという伝説が北海道のあちこちにあります。積丹半島の最先端の狭い自然遊歩道は「チャレンカの道」と呼ばれ、夏は格好の散策道です。この道を突き当たりますと、女人禁制の岬に立つ灯台があり、先端が神威岬です。(写真下:5年6月)
岬が海に落ちて点々と連なる岩の中で、もっとも大きい岩が神威岩です。露天風呂からズームアップして撮影した岬の高台には、灯台が写っていました。
チャレンカの道は冬通行止めです。夏もちょっと風が出ると吹き飛ばされる恐れがあり、すぐ通行止めになります。
積丹から小樽にかけての海岸には奇岩・絶壁が多くて海岸美が楽しめ、国定公園に指定されています。ところが、安全を期してどんどんトンネルとなり、海岸美が見られなくなるという嘆きも聞かれました。過剰な公共事業といえるかも知れません。真冬の温泉に浸かりながら神威岩を眺めることができるとは、思いもよりませんでした。ここの夕日は最高だろうと思いました。まさに落日といった感じでしょう。
冬至まもない緯度の高い北国は、午後3時を過ぎますと暗くなり始めます。札幌に戻ると何事もなかったかのように、見慣れたホワイトイルミネーションの世界が広がっていました。 (完)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。
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