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森の主 誕生観察記
【北の国からのエッセイ】 2010年06月23日

「フクロウが来ているよ」
自然観察仲間の連絡で、ああ また今年もお目見えかと思いながら、足は近郊の森に向く。あのかわいい仕草がなんともいえず、写真に収めようと久しぶりにスコープの手入れをする。

エゾフクロウは365日森にいる。普段は警戒して森の奥に潜み、なかなか観察できない。しかし6月のこの時期、フクロウは繁殖の時期を迎え、生まれたばかりの赤ちゃんが枝に止まっているのが目撃される。よちよち歩きで、じっと親鳥が餌を運んでくるのを待っている。まるでぬいぐるみである。その姿を求めてマニアが集まる。

フクロウ発見!
葉が生い茂るこの時期、フクロウを見つけるのは大変難しい。現地に着くと、まずフクロウがどこにいる、どの木に止まっているというのを確認することから始まる。

≪ 目の前のまっすぐ伸びた高木をずっと上に見上げると左側に枝がある。その後ろに別の木の枝が山型に伸びている。その山型の左側に下っている枝先の部分…≫

仲間が丁寧に教えてくれるが、なかなか見つからない。フクロウの肌と枝がほぼ同一色で、見分けるのが難しい。

ようやくフクロウらしき物体を見つけ、これをカメラのフレームから覗き込んで被写体に焦点をあてるのもまた一仕事だ。肉眼で見るのと、カメラの望遠を通じて見る感じが違うからだ。


もっと近くで見ればいいじゃないかと思うかもしれないが、自然公園地域でむやみに森の中には入れない。通路から二十メートルは離れており、望遠でなければ見ることができない。いつも思うが、最初に見つけた人は相当なプロだと思う。

はい ポーズ!
セットが終了し、役者も揃って、さあ撮影と思っても、すぐシャッターを押すことはできない。というのも、フクロウ君はこちらの思うようなポーズをとってくれない。

背中を向けてしゃがみこんでいる。(写真右) これでは、何の面白味もない。

「お~い、こっち向いて」「目を開けて」
仲間同士で言い合っては笑っているが、フクロウ君はわれ関せずだ。これからが持久戦である。

フクロウのひなは数日前まで3羽いたという。けど、この日は2羽しかいない。毎日通っているベテランによると、1羽は落下したきり戻ってこないという。おそらくカラスに食べられたのではないかという。鳥の世界では、誕生したヒナがみな育つことは難しい。厳しい弱肉強食の世界だ。羽ばたけるまでもう少しだ、頑張れという気持でじっとフクロウの様子を見守る。

フクロウが動いた。カメラを構える。こちらを向いたが残念ながら目はつぶっている。眠っているのかな。カメラをずっとオンにしておくと、電池の消耗が激しい。もちろんスペアは持ってきているが、それでも大事な時に撮影できないのを恐れて、時々電源は切っている。

シャッターチャンス!
「目を開けているよ。」 仲間が叫んだ。

ファインダーをのぞくと確かに目を開けている。ところが手前のイタヤカエデの葉がひらひらし始め、肝心なところを妨げる。「あの葉っぱを落としてきてよ。」そんなことができるわけもないのに、仲間から思わず願望が口走る。風がやんだときには、シャッターチャンスはもう逃がしている。

フクロウがこちらをむいて目を開け、葉も大きく揺れて空間ができるというチャンスは極めて少ない。それでも辛抱強く何度も繰り返してはシャッターをきる。最大のチャンスは、親が餌を咥えて戻ってくるときだ。木の枝をよちよち歩くヒナは、まだ自力では餌をとることはできない。親が戻ってくるチャンスを待つが、親はなかなか戻ってこない。

もう4時間も待っている。ヒナはなにを食べているのだろう。カメラを構えている人の中には、セミプロのような人もいる。その人によれば、フクロウは肉食なので、この時期、親鳥はセミを主に与えているのではないかという。

通常フクロウはネズミを常食にしている。ヒナは親が戻ってくるのを首をながくして待っていることだろう。半日粘ったがついに親鳥は現れなかった。この日もっともよく撮れたと思える写真である。(写真右)

3年前はもっと近くて条件の良いところで観察できた。(07年6月14日)「いない いない ばあ」を繰り返すフクロウ(写真下左) 目をぱっちり開けてカメラの方に向くフクロウ(写真下右)  この時は遠く東京、関西方面からもマニアがどっと訪れ、連日大賑わいだった。

 

今年は静かなフクロウ観察となった。今月(6月)中には飛び立って、私たちの視界から消えることだろう。 (完)
望田 武司(もちだ・たけし)
1943年生まれ 新潟県出身
1968年NHK入局 社会部記者、各ニュース番組デスク・編責担当
2003年退職し札幌市在住、現在札幌市の観光ボランティアをしながら自然観察に親しむ。