8月8日 (水) 3時限目

 

13:00~

畑村洋太郎

東京大学 名誉教授、 工学院大学 教授

講義

「失敗を生かす」

 

【授業レポート】

「失敗とは、あって欲しくないことが起こること。その中にも許される失敗と許されない失敗がある。」畑村先生は、全く新しいことを始めると99.7%は失敗するが、失敗について考え、知識と経験、思考を積み重ねることで高いレベルに到達できる、として講義を始めた。

 

 

H2-Aロケットの墜落事故は、やるだけのことをすべてやって起こった事故だった。検証の結果、原因は重量を削ることを一番に考えていたために、余計かもしれない2重の配線を行わなかったことだった。

 

 

東大で学生に「物が壊れる」ところを観察させようと行った圧縮実験に失敗し、畑村先生自身も大きな事故を起こした。原因は、実験で具体的にどのようなことが起こるか考えていなかったこと。本当に危ないと思ったときには自分の判断で逃げるしかない。

 

 

「失敗を突き詰めて考え、現象を解明すると技術は進歩する」。事故は責任の所在を追及するだけでは解明したと言えない。大型回転ドアの事故の検証では、畑村先生は個人的に再現実験を行い、高層ビルのドアの大型化が根本的な原因だと突き止めた。

 

 

技術を進歩させた失敗の例として、タコマ橋の崩落(横風崩落)、戦時標準船の沈没(脆性破壊)、コメット機の墜落(疲労破壊)を紹介。物が破壊される様々な原因を知り、安全性を高めるきっかけとなった事故だ。

 

 

人間は失敗を通じて成長する。そして人は誰でも失敗する。「きっとあなたも失敗する。その時には何か変なこと行ってたぞ、とこの授業を思い出してほしい」

 

 

 

最後に10分間の演習として、塾生に自分の一番大きな失敗を、それがどんな現象で原因がどういう構造を持っているのか、それを防ぐにはどうしたら良かったかを書き出させた。「10年、20年、50年後に振り返った時、自分への最大の励ましになる。」

 

畑村先生は塾生の間を歩きながら、失敗の捉え方について「要因の構造を考えて」とアドバイスを送った。

 

 

  

塾生からの「先生自身はどんな失敗を?」「日本と失敗から学んでいる他国との違いは何か?」などの質問に丁寧に答える畑村先生。「大変だけど楽しかった」と笑顔で講義を終わった。

 

 

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【講師ご紹介】

東京大学工学系研究科修士課程修了。東京大学教授を経て、現在工学院大学教授、東京大学名誉教授。
東京大学の機械工学科で、ものを創る教育や研究を長く行ってきました。今は自分で研究所を作って様々な研究や企業等の教育を行っています。主な著書に、失敗はやってはいけないことではなく失敗から学びとることが大事だという“失敗学”を提唱した「失敗学のすすめ」(講談社)、数学を直観的に理解することが大事だと考える「直観でわかる数学」・「直観でわかる微分積分」(岩波書店)、ゼロから新しい考えをどう生み出すか述べた「技術の創造と設計」(岩波書店)、様々な事故事例を通して失敗について本と映像で学べる『NHK出版DVD+BOOKだから失敗は起こる』(NHK出版)があります。