第1回夏合宿(関本・有馬塾) ①(8月1日)

 ノーベル賞学者と、それに劣らぬ先生、実験名人たちが、全国から選ばれた中学生男女40人と、富士山の麓で繰り広げる合宿が8月1日、11日間の日程でスタートした。

 

山梨県富士吉田市新屋の「経団連・人材開発センター研修所」で、同日9時から開塾。

 

「理科のおもしろさを知ってもらう機会に」―開塾の狙い語る有馬朗人・塾長

 最初は発案者で主催者の有馬朗人・武蔵学園長(元、文部科学大臣、東大総長)が「優れた研究者に会い、肉声に接する機会」「実験を含めた授業で自然科学、今回は物理のおもしろさを知る」ために開いた、と開塾の趣旨を語った。
続けて「学生の理科離れ、学力低下がマスコミなどでいわれているが、データを良く見るとそんなことはない。理科好きは多い。むしろ、大人の理科に対する理解度が低い」と、国内外の調査結果を詳しく引用して説明した。最後に、ご自身が学生時代にノーベル物理学賞受章者の故・朝永振一郎博士に言われた言葉「もっと大きな夢をもつこと」を塾生たちに贈り、励ました。

 

「若人よ、大志を抱け」―関本忠弘 塾長

イメージ 2 続いて、同じ主催者で、日本で2人目のIEEE賞(世界最大の電気、電子分野の賞)受章者で、Channel J社長(元、NEC社長)は自身の生い立ちから東大物理学科を経てNECでの取り組みを話した後、長年の経験から「能力=素質+教育」、「成果=能力+やる気+つき」との論を示した。
さらに、科学に挑む3つのキーワードを上げた。
《感じる》=「Whyの気持ちを常に持とう。それが本質に迫る」
《信じる》=「自信と誇り」を持ち、「謙虚と反省が必要」
《行動する》=「まず、意志ありき」そして「意欲から行動が生まれる」
最後はクラーク博士の言葉を引用「若人よ、大志を抱け」を塾生に訴え、さらに「この中からノーベル賞受賞者が出ることを期待する」と付け加えた。

 

「宇宙の真相に迫るのは、あなたたちの力」―小柴さん

イメージ 3 3時間目は、この日のハイライト。ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊さん。
「大きいことと小さいこと」をテーマに宇宙の生い立ちから、宇宙の大きさ、そして原子を構成する素粒子の極小な世界を、噛み砕くように優しい口調で、語りかけた。太陽から発する、素粒子の一種「ニュートリノ」の観測に挑み、岐阜県神岡町(現・飛騨市)に設置した「カミオカンデ」(3000トンの水を貯めた装置)で世界で始めて「ニュートリノ」を捉えた様子を丁寧に説明した。
この小さな小さなニュートリノの観測により、何十年後にはビッグバンの3秒後の世界を知ることができるだろうと、未来へ期待を覗かせた。

 

 午後は実験名人のサイエンスプロデューサー、米村伝治郎さんによる「実験」。
ブーメランの飛ぶ仕掛けを教室で実際に飛ばしながら説明。静電気実験では全員が輪になって手を繋いたところで、静電気を一人に当てると、全員に電気が走り、「キャーッ」。
ガラスの管に火を当ててできた火の玉を水に落とすとできる強化ガラス「オランダの涙」や毛細管、顕微鏡作りなど、初めての実験に皆、興味津津、何度も歓声が上がった。

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3人の科学者にとって受講生の塾生は孫というよりひ孫の年。全国から選ばれた科学好きの中学生たちは憧れの科学者を目の当たりに感激、必死にメモを取っていた。
講義が終わると、みな、講師に駆け寄り「サインを下さい」行列を作ったが先生たちは快く応じていた。
塾生たちは、「有名な科学者に会えてものすごくうれしかった」「昆虫に興味があるので将来は昆虫学者になりたい」「有馬先生に『夢を持ちなさい』と言われたことが心に残った」、「有名な実験の米村先生をそばで見てうれしかった」と、感想を述べ合っていた。
講義の後、小柴さんは講座の感想を聞かれ「子どもたちみんなの目が輝いていた。本気で聞いていることが分かった」とあの微笑で話した。

※「スーパー先生と子どもたち」(2006年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。

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