「創造性の育成塾・夏季合宿レポート」④=8月7日

「創造性の育成塾」の第2回夏季合宿が4日、山梨県富士吉田市の「(財)人材開発センター、富士研修所」で開講した。今年のテーマは「化学」が中心。全国から選ばれた理科好きの中学生40人に対し、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹さん、同賞授賞の李遠哲さん(台湾)をはじめ、わが国屈指の科学者、研究者、教師が、11日までの9日間、講義、実験、講話を続ける。
昨年の第1回合宿(物理)は各方面から高い評価を受け、今年は企業の研究所のノーベル賞候補の研究者の講義や実験が新たに加わったほか、授業の模様が初めてライブ配信される。富士山登山なども盛り込んだ計約3000分のカンヅメ授業で、塾生たちが将来の科学者への夢をつかんでくれることが期待される。毎日の授業の模様を報告する。

富士山五合目自然観察

朝、合宿所をバスで出発し、今日ははっきりと頭が見えている富士山の5合目に向かう。5合目の管理センターで、5つの班に分かれ、ガイドさんの言葉で、6合目付近まで説明を受けながら、約2時間散策した。

 

温暖化で森林限界延びる

 富士山を代表する植物である、石楠花やホタルブクロ、ダケカンバなどが見られた。塾生は、カメラを片手に、ガイドさんの話に耳を傾け、さまざまな植物を観察した。
ガイドさんの話では、森林限界(高木が生育できなくなる限界高度)の境界線付近にある5合目でも、温暖化の影響か、年々高木の生育する範囲の高度が高くなってきているという。ガイドさんは、「ここ数年で、実感できるほど、草花が高いところまで生育するようになりました」と、温暖化を説明していた。

 

“生の富士山”に、感動

 最後に、ガイドさんは塾生に、「富士山に足を運んでみて、今までイメージしていた富士山の形は実感できましたか?」と聞いた。答えは全員「いいえ」。「富士山の頂上までには崖があったり、土砂崩れがおきていたり。森の部分があったり、砂利の部分があったり。富士山は実は変化に富んでいるんです」というガイドさんの言葉に、塾生はうなずく。イメージとは違う、“生の富士山”に直に触れた。また塾生は、持参したポテトチップスの袋の膨らみに気圧の変化を実感。また一つ、「自分で体験し、確かめること」の大切さを感じたようだった。
塾生は、登山客、観光客の多さ、時折見える5合目から見下ろす裾野の景色にも感動していた。

 

富士山美化運動にも参加

班ごとにゴミ袋を持ち、ゴミを拾いながら散策した。日本を代表する富士山に登った台湾からの招待生、李 叙括さんは、「富士山は世界的に有名。特に環境、景観保護がしっかりしているということを聞いていたが、実際にとてもきれいで驚いた」との感想。富士山保護運動の成果が出ているのかもしれない。

 

山梨県 環境科学研究所

 五合目に戻った塾生たちは、バスで30分の「山梨県 環境科学研究所」で自然観察と環境問題について学習。
研究所は標高1035m、剣丸尾(けんまるび)溶岩の上にあり、一周300メートル余りの木道がめぐる研究林には、アカマツ林が広がっている。多孔質の溶岩に覆われた地表では、悪条件でも繁殖する地衣類から草、樹木へと徐々に植生が変化し、森林が形成されていく。土が少なくても生育できるアカマツの林はその推移の中途の姿であり、森林の成り立ちを知る上では貴重な研究環境だ。
2班に分かれた塾生たちは、まず露出している溶岩に触ってみることから観察を始めた。
 「この葉っぱをちょっと噛んでみてください」研究員の説明を聞きながら五感を使うことで、「知る」がただの「知識」ではなく「体験」から得たものになる。塾生たちはスノキの葉のすっぱさ、ネズの葉のチクチクとした感触、ダンコウバイの葉の匂いなど、ひとつひとつに手を伸ばし、その不思議さに改めてそれぞれの木々を仰ぎ見ていた。
また、研究員が写真を見せながら行った、森に棲む動物の説明では、マツボックリの芯に残った小さな歯型を見つけ、驚きの声をあげる一幕も。
続く環境学習では、体験ブースや展示を自由に見た後、クイズとビデオを交えたプログラムを受け、日常生活が環境に及ぼす影響と生活の中で出来る環境対策について学んだ。

 

 「道の駅・富士吉田」でそれぞれにお土産を買い、3日ぶりの外出を楽しんだ塾生たち。カンヅメ授業の後の野外学習は、良い気分転換になったようだ。

※「創造性の育成塾・夏季合宿レポート」(2007年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。
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