「光量子科学の最前線への招待」五神 真 理化学研究所 理事長(創造性の育成塾 塾長)

講義

 2024年度創造性の育成塾。最初の講義は、創造性の育成塾塾長で、理化学研究所理事長の五神真先生のご講義です。

冒頭、中学2年生である塾生を前に、「先生は校庭に電柱を立てていた」というご自身の中学2年生の頃の思い出を話されました。塾生たちも親近感がわいたのではないでしょうか。

 初めに五神先生が話されていたのは、現在世の中で起こっている様々な問題に関してのお話でした。地球温暖化、水質汚染、戦争…これらは全て、人間の行動が原因となって起こっている問題です。私たちは、データを活用して様々なことを推測し、自分のすべき行動を考えることができます。五神先生は、「問題解決には、科学者と政治家が、それぞれの最先端を理解しようとする姿勢が大事である」と、真剣な表情でお話されました。

次に、五神先生は、「知のプロフェッショナルとなれ」と言葉をかけられました。「新しい発想を生み出す」「忍耐強く考え続ける」「自ら原点に立ち戻って考える」が知のプロフェッショナルになるために大事であるそうです。さらに、周りの人を受け入れ、尊重するといった姿勢が重要なのだそうです。塾生も真剣な面持ちで先生の話を聞いていました。

続いて、五神先生の研究に関してです。導入に、光の研究に関する科学史を話された後、光のエネルギー量は波長および振動数に依存することを解説されました。光の量子と波の性質を持つということに関しては、白い粒が徐々に干渉した波の線を造形していく動画を見せながら説明され、塾生も魅せられていたようです。

 また、先生は、光の量子としての性質を最も活用しているものとして、レーザーを挙げました。レーザーの単色性、指向性(1つの方向に一直線に進むこと)には、電子の誘導放射を用いているとのお話でした。誘導放射によって同じ性質を持った光が大量に生産され、私たちの日常に欠かせないレーザーが生み出されているといいます。

 最後に、五神先生は、未来を担う塾生に向けて熱いメッセージを述べられました。
東大では、生み出す力が鍛えられた人を歓迎しているといいます。変化の激しい現代社会において、未来に対して備えるべきことを生み出せる人は欠かせません。「変わっていくということは、みんなにとってのチャンス」という言葉には、塾生も心を打たれたのではないかと思われます。
また、五神先生は、「この時代に生まれた塾生を羨ましい」と仰っていました。データや情報を集めやすく、AIも活用できる現代は、自分の若い頃よりももっと早く面白いことをたくさんできるのだろうと。
そして、「面白いと思うことは大切。楽しみに向かって研究をしていこう」という言葉で講義を締めくくりました。スライドに大きく表示された「好奇心を大切に!」という言葉が印象的でした。

 塾生の「光電効果において、電子が外に出ていくのは振動数が一定以上なのはなぜか?」という質問に対しても、分かりやすく説明されました。

(16期 下川夕馨)