「『はやぶさ2』と太陽系探査」津田 雄一 JAXA はやぶさ2 拡張ミッションチームリーダー

講義

2時限目は、現在JAXAの「はやぶさ2」拡張ミッションチームリーダーの津田雄一先生の講義です。
津田先生は太陽系の歴史や生命の起源の調査に大きな貢献を残した「はやぶさ2」のプロジェクトマネージャーを務められていました。
「今日の講義を通して、宇宙探査や宇宙開発がどのような仕事なのかを知ってもらいたいです」と、JAXAのプロジェクトの紹介をする津田先生。塾生たちは壮大な宇宙で行われるミッションの裏話に興味津々の様子でした。

「小さい頃から好きだったことは何ですか?」「宇宙に興味がある人は、宇宙の何がやりたいか、もう一段階深く考えてみてほしい」と、これから進路を考える塾生に向けて、津田先生は問いかけます。津田先生は、幼少期から工作と宇宙が好きだったため、大学では宇宙工学を専攻しました。大学時代は、空き缶を用いて超小型の模擬人工衛星の開発に取り組み、多くの人と出会い、協力して、打ち上げ実験に成功します。

その後、新たに開発した小型人工衛星を打ち上げ、綺麗な地球の画像が届いたときは、感動したそう。人工衛星の開発に魅せられた津田先生は、その後、JAXAで探査機「はやぶさ2」の研究開発に携わりました。

次は、「はやぶさ2」のプロジェクトについて。
太陽系にある小惑星についてや、プロジェクトの目的地をリュウグウにした理由、プロジェクトの舞台裏などを分かりやすく説明する津田先生のお話に、塾生は引き込まれていました。

往復飛行をはじめ、「はやぶさ2」が成し遂げた世界初の偉業の裏では、いくつもの課題を乗り越える必要がありました。特に「はやぶさ2」をリュウグウのどこに着陸させるかという問題に直面した際は、科学者300人と技術者300人、総勢600人ものメンバーが協力したそう。津田先生たちは、4か月かけて着陸のためのソフトウェアをアップデートし、着陸を成功させました。

「はやぶさ2」のミッションには、リュウグウに穴を開けて地下の情報を得るというものがあります。穴を開ける際の爆発に巻き込まれないように「はやぶさ2」は小惑星の反対側に避難しますが、「はやぶさ2」に積まれていた空き缶サイズの人工衛星を用いることで、人工クレーター生成の瞬間を世界で初めて撮影しました。「今までやって来たことが活きました」と、津田先生は大学時代に超小型人工衛星を開発した経験を思い出しながら振り返ります。

その後、「はやぶさ2」は無事にサンプルリターンを終え、採取されたサンプルは現在も世界中で研究されています。リュウグウのサンプルのカタログは公開されているそうで、興味のある塾生にはぜひ見てほしいとのことです。

講義の最後に、津田先生はご自身の経験とともに「夢が叶ったというよりも、小さな興味を育てたら、夢のようなことができた」と語ります。「自分の好きなことを突き詰めて好奇心と縁を大切にしてください」と塾生に伝え、講義を締めくくります。

「はやぶさ2」ミッションが終わった後も、「はやぶさ2」は他の2つの小惑星を目指す「はやぶさ2」拡張ミッションに用いられています。いつか塾生の中にもこのミッションや他の宇宙探査に携わる人が出る日も近いかも知れません。

(11期 岸田彩花)