「異常気象と気候変動の関係を考える」山形 俊男 東京大学名誉教授 / 海洋研究開発機構 特別上席研究員

講義

4時限目は、山形俊男先生による講義です。
小さい頃家の近くに測候所があったことで、気象が好きになったという山形先生。大気と海洋の現象を調べ、気候変動の予測に取り組まれてきました。

まずは、昨年度の異常気象・気象災害を振り返ります。
世界的な高温、大雨の影響で、カナダやハワイ・マウイ島で山火事、ブラジルやリビアで洪水などが起こりました。人類が生存するには、水と生息可能な地球環境、衣食住、健康、資源・エネルギーなどが必要だといいます。ところが、このすべてを不安定化するのが気候の変化と変動です。現在は地球温暖化が急速に進行し、”安定した地球”として留まれるかどうかの瀬戸際だといわれています。価値観や政治的・社会的な面での変革も重要になってくるのに加え、「まずは異常気象を生む自然のメカニズムを知ろうじゃないか」と先生は話します。

続いて、大気・海洋現象についての基本的な説明があった後、山形先生が研究されてきた気候変動現象についての話に移ります。
はじめに取り上げるのは、太平洋の海面水温が変化するエルニーニョ現象・ラニーニャ現象です。以前から知られていた、同じ地域で気圧が変化する「南方振動現象」は、エルニーニョ現象と深く関わっていることが研究によってわかりました。「学問は相互の連携が非常に重要なんだぞ、ということです」と先生は語ります。また、先生が発見された「ダイポール・モード」と「エルニーニョ・モドキ現象」についての紹介もありました。

これらの気候変動は、私たちの社会へ強く影響を及ぼします。例えば、異常な高温により熱中症での死亡者が増加したり、冷夏が農作物の不作に繋がって大きな経済的損失が生じたりという問題です。事前に対策するためにも、気候変動の予測が非常に重要だと先生は言います。先生方の尽力により、現在、気温・水温・降雨の早期予測が実験的に可能になったとのことです。

「最後に、今の人類に残された時間を考えてみましょう。」コペルニクスの原理という仮説に基づくと、私たちに残された時間は最短で5000年。「その間にどのような文化をつくるか、それが重要だ」と、塾生たちにメッセージを送られました。

(15期 日吉雪乃)