「『はやぶさ2』と太陽系探査」津田 雄一 JAXA宇宙科学研究所 副所長

二時限目は、はやぶさ2プロジェクトマネージャーを務めた津田雄一先生の講義が行われました。先生は宇宙を勉強したいという思いを持ち、大学で航空宇宙工学を専攻。ジュース缶を使った模擬人工衛星を作り、アマチュアロケットを作っている方にお願いして打ち上げたというお話をされていました。この経験は、人工衛星づくりにも活かされているといいます。

そして先生の所属するJAXA宇宙科学研究所の説明に。塾生たちはそのスケールの大きさに圧倒されていました。また。光の持つ力を用いて動く宇宙ヨット「イカロス」のお話を聞いた塾生は見慣れない形に驚いた様子でした。

はやぶさ2のプロジェクトのお話では、まず太陽系内の小天体の数を塾生が予想しました。正解は144万個ほどとのことで、200万個という近い数値を出した塾生がとても喜んでいました。太陽系内には膨大な数の小天体があり、今もなお新しく発見されているとのことでした。大きさも形もまちまちな小天体ですが、主要な惑星に目が当てられがちな宇宙において、小天体を調べなくていい理由はないと先生はおっしゃっていました。

リュウグウについてのお話では、望遠鏡で見た小天体の反射率が低く黒いことに目をつけ、「生命誕生の材料でもある炭素・水の起源に迫れるのでは」と考えたとのことでした。最も難易度が高いと言われ、誰も成し遂げていなかった惑星間往復飛行を世界で初めて成功させたのははやぶさシリーズであり、塾生たちはその技術力に驚いていました。先生は、人工衛星による天体観測の4つの方法の難易度をジェットコースターに例えて説明され、塾生たちはより具体的にイメージがわいたようです。はやぶさ2の実際の構造は、6m四方ほどの大きさにもかかわらず、600kgほどしかないとの話を聞き、塾生は驚いていました。
先生は、はやぶさ2から送られてくる写真によって、リュウグウの形が段々と分かってくるのを毎日楽しみにしていたそうです。

また、実際にリュウグウがとても黒いということがわかる写真を見て、塾生は普段見ないリュウグウの姿に驚いていました。リュウグウの地表には岩塊が多数存在し 、表面温度が100度を超える険しく過酷な環境。そんな中、大きな損傷が許されないはやぶさ2本体を着陸させるために、地球から遠隔でソフトウェアの書き換えをするなど、様々な戦いがあったそうです。人工クレーターの形成を撮影するという取り組みでは、大学時代に作った空き缶模擬人工衛星の知識が生きたとおっしゃっていました。総勢150人ほどが見守る中でタッチダウンに成功した瞬間の映像を見た塾生は、喜ぶ関係者を見て感じるものがあったようです。持ち帰ったカプセルの内容物から、地球外生命体が存在する可能性があることがわかったということを聞いた塾生は興味深そうに話しに聞き入っていました。

最後に先生は、「夢がかなったのではなく、小さな興味を育てていったら、夢のようなことができた」とおっしゃっていました。塾生に、興味や好きなことを育てていってほしい、好奇心や出会いを大切にしてほしいとのメッセージを伝えていただきました。

(16期 辻巻 輝)