
上田先生の講義は「考える力」の必要性についてお話しするところからは始まりました。国際紛争や新型コロナウイルスのパンデミックなど、予想外のことが起こる現代社会では、AIのように過去の事例を踏襲することだけでは対応できず、だからこそ人間の「考える力」の意義が上がると上田先生はおっしゃいます。

優秀さの評価基準は人生のステージごとに変化していくため、将来的に活躍する人になるためには、その変化と関連性を認識することが必要です。大学受験までは答えが一通りに決まった問題を正確に解く力「マニュアル力」が求められる一方で、大学や社会で特に必要とされるのは、課題を自ら見つけ、独自の解決策を編み出す「考える力」や「創造力」です。もちろん「考える力」や「創造力」は、「マニュアル力」によって得られる知識を土台とするため、地道に知識を身に着ける重要性も強調されました。

次にその「考える力」を身に着け、鍛える方法についてお話されました。
先生曰く、「考える力」は筋肉トレーニングととても似ていて、生まれつきの才能ではなく不断の努力で鍛えられるそうです。そのトレーニング方法を具体的に2つ教えてくださいました。
1つ目は、自分の中の問題意識を明確化する方法です。日常の中でふと浮かんだ疑問を言葉で表現することを積み重ねることで、人が気づかないことに対する感度が増し、問題を明確化する能力が高まります。
2つ目は、地図メソッドです。まず、自分の興味のあることに関して資料を徹底的に集め、分かっていることを整理することで、自分の分からない問題を洗い出します。その問題の中で、自分がギリギリ頑張ればできると思えるテーマを選択し、長い時間をかけて粘り強く考える方法です。これらの方法を習慣づけると、運動が習慣づいて体を動かす楽しさが実感できるように、考えることが楽しくなってくるそうです。

最後に、大学受験も就職にも失敗し、それでも屋根裏部屋で研究を続けたアインシュタインを例に出し、諦めない人間力が研究に最も大事であるとおっしゃった上田先生。自分に才能があるかという問いに対しての答えはないが、自分に可能性はあるかという問いには「ある」という答えがある。そう言ってエールを塾生に送りました。

講義中、上田先生が塾生の近くへ行き、語りかけられる様子が印象的でした。
質疑応答では、「日常生活の中で問題を見つけるための工夫とは?」などの質問に、丁寧に答えてくださいました。
(14期・坂井陽葵)