
2時限目は、太平洋におけるエルニーニョ現象等の研究を行い、気候予測の第一線で活躍されている山形俊男先生の講義です。「名字は山形だけれど山形県に住んでいるわけではないよ」とユーモアを交えながら講義を始められました。
講義の冒頭では、世界中で多発する様々な異常気象が紹介されました。アテネ郊外の山火事、アメリカ東南部を襲ったハリケーン、そしてスペインでの洪水被害の画像に、塾生たちは息を呑んでいました。

続いて、気温が約1度上昇すると大気中の飽和水蒸気量は7%上昇するという理論が提示され、温暖化と多雨は密接に関係していることが言及されました。実際に世界の雨量は増加しており、陸地の割合が高い北半球では特にその傾向が顕著であるそうです。
講義の中盤からは先生の専門分野であるエルニーニョ現象・ラニーニャ現象が紹介されました。説明に使われたコリオリの力、エクマン輸送などの単語は多くの塾生にとって初めて聞く単語のようでしたが、みな真剣に理解しようと奮闘していました。

エルニーニョ現象発生時は、日本を含む東南アジアは低温に、南米や太平洋諸島では高温になるが、2004年にエルニーニョが発生した際は日本も猛暑となったことをきっかけに「エルニーニョもどき現象」を考案した、との先生のお話に、塾生たちは集中して聞き入っていました。さらに太平洋から離れたインド洋熱帯域で生じるダイポールモード現象も紹介されました。これはインド洋における大気と海洋の相互作用により生じる気象であり、アフリカ東部のソマリアでは大規模な洪水が、オーストラリアでは記録的な干ばつが見られたそうです。長い間オーストラリアではエルニーニョ現象が発生した年は小麦が不作になると信じられてきたが、実際はダイポールモード現象が干ばつをもたらしており、相関関係で安易に物事を判断することの危険性もおっしゃっていました。
終盤では、AIによる気候予報の話題が出ていました。現在でも半年後の気温・降水量などの気候要素の予測が可能になっていますが、AIによる技術革新が天気予報、次いで気候予報にも訪れると話されていました。そして、「互いに他を思いやり、未知の探検を続け、素晴らしい文化を残そう」との言葉で講義が締めくくられました。

講義後の質疑応答では、「新しい現象を発見する際、どのような着眼点を持っていますか」などの質問に、丁寧に回答してくださっていました。
(15期 小林直輝)