
最初の講義を飾るは、塾長であり理化学研究所理事長の五神先生です。
長年「光」に関する研究を行われてきた五神先生。過去には東大の総長も務められました。「これまでの時代は、安定した稀な時代なのかもしれない。変化が激しい時代に、さまざまな問題をどう解くか?」と講義が始まりました。

長い目で地球の歴史を振り返ると、人類の文明は比較的気候が安定した時期に生まれました。しかし人類の活動により地球温暖化などの環境問題が進行しています。中には人々が協力し解決できた環境問題もありますが、地球を守るために我々には何ができるでしょうか?
東大総長時代に経験した様々な仕事のお話では、総長を務めていた最後の年にパンデミックが発生し、全授業のオンライン化などの対応を進められました。入学式での新入生へのお話では、社会の課題を解決するためには「知のプロフェッショナル」(*1)になることが重要だと訴えられました。また、在任中には梶田先生のノーベル賞受賞もありました(*2)。

多忙な総長時代にも、ご自身の「光」に関する研究活動を続けられた五神先生。
「光は音のような波か、原子のような粒か?」と次第に研究のお話へ。光が波であることの証拠はヤングの干渉実験に見ることができます。そして電磁波に関するマクスウェル方程式の発見後、ヘルツがその存在を実証しました。しかし、アインシュタインは光が粒子(光子)でもあるという法則を見出します。光は波でも粒子でもある不思議な存在なのです。人間の目は5~15個程度の光子を感知できるほどの高感度だそう。
同様に数少ない光子の信号(微弱な光)を検出する装置が、光電子増倍管です。この装置を使うと、ニュートリノという不思議な素粒子の研究ができ、この研究で小柴先生や梶田先生がノーベル賞を受賞されました(*2)。このような波でもあり粒子でもある不思議な性質を記述する学問が「量子力学」です。

現代社会は、光の性質を使いこなした様々な技術で溢れています。例えば「レーザー」は、原子の性質も利用して作り出される便利な光です。インターネットから、加工技術、天文観測に至るまで欠かせない技術となっています。同様に原子と光の性質を用いて作られる極めて高精度な時計「光格子時計」は、近い将来、世界の時間の基準になると期待されています。地球の重力がわずかに時空を歪めていることを測定できることも!夢が膨らみます。
しかし光の研究はまだまだ謎がいっぱい!五神先生は、「知識の量ではなく、知識を使いこなす」こと、そして「変化とチャレンジを楽しむ」ことの重要性を述べ講義を締め括られました。

質疑応答では光電子増倍管の仕組みなど活発な質問が飛び交いました。知のプロフェショナルになって光の謎を解くのは皆さんかもしれませんね。
*1) これは実は私(6期 直川)が東大に入学した際の五神先生の言葉です。印象に残っています。
*2) 小柴先生は、第一回の創造性の育成塾で講師を務められました。梶田先生は過去に何度も育成塾で講義をされています。そして今年も!明日の講義が楽しみですね。私は第一回の小柴先生の講義をテレビで見たことが、その後育成塾に応募したきっかけの一つです。
(6期 直川史寛)