
1時限目は、東京大学情報基盤センタースーパーコンピューティング研究部門教授で、高度なシステムソフトウェアの研究をされている中島研吾先生の講義です。
にこやかな挨拶ののち、まずご自身の経歴を紹介されました。先生は、大学卒業後、三菱総合研究所で原子力関連の研究に従事され、その後、教員を経て現在の職に就かれています。教員時代には、スーパーコンピューター「地球シミュレータ」の使い方を大学院生に教ていました。世界一の立派なコンピューターがあっても、地球物理を学ぶ学生で使いこなせる人が少なかったため、教える立場に就いたとのことですが、当時は教育の前例がなく、教材作りから始められたそうです。

続いて、東京大学情報基盤センター、理化学研究所の説明。日本における計算科学や計算機科学の振興をミッションに、さまざまなスーパーコンピューターが改良、開発され、どのように性能が向上してきたのかを実際に数値やグラフを用いながら説明されました。スーパーコンピューター「富岳」の1秒間の計算量はあまりにも桁が大きく、塾生たちはその数値の大きさに驚きながらも、想像を膨らませ凄さを実感しているようでした。

先生は育成塾の選考問題について、「必ず実験と理論で説明する問題ですね」と話され、自然科学の柱は、基本的に「実験」と「理論」であると説明されました。そして1990年代からは、3本目の柱とも言える「計算科学」という言葉が出てきました。計算科学とは、シミュレーションに基づく、実験できない分野における計算の上での科学。理論と実験の両方を補完するもので、例えば真空条件など自然条件では難しい条件での実験のシミュレーションなどに使われると話されました。

先生は、「スーパーコンピューターによるシミュレーションに必須なのは、SMASH(science, modeling, algorithm, software, hardware)という5つの分野。しかし、1人で全部できる人はほとんどいない。だからこそ、協力が不可欠で、自分の専門以外のこともちょっと知っておかないといけない。自分の専門分野だけでなく、周辺のことも勉強しておくと可能性が広がる。」と話され、先の時代、視野を広く持ち、分野の掛け合わせをすることがどれほど重要なのかを塾生に伝えていました。実例として「CO₂地下貯留シミュレーション」を挙げ、複数分野の研究者が連携して取り組む様子を紹介されました。
(13期 五十嵐瑶希)