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少しぐらい古くても死にゃせん!
【今日のひとこと】 2008年2月18日

今は他界した祖母の口癖です。賞味期限を過ぎた食べ物を捨てようとするたびに、祖母から「もったいない、自分で実際に食べてみて(捨てた方がいいかどうかを)判断しなさい」とたしなめられたものでした。

考えてみれば、食べるものを八百屋さんや肉屋さんの店頭で買うのが普通だった時代には、店の人が賞味期限をわざわざ印刷しなくても、買う側が経験から「これは古いけど大丈夫」「これは色が変わったから早く食べないと」と判断していたのです。人間の舌も、腐った食べ物や異物を敏感に見分けることができます。進化の過程で命を守るために身につけた感覚なのでしょう。

そういう環境で育ったせいか、私は賞味期限や消費期限よりも自分の舌で判断する癖がついてしまったようです。購入してから1カ月半たった納豆を料理して食べたけど大丈夫だった、と知人に話したら、ほとんどの人は「えー!気持ち悪い!」と言いました。でも私は納豆メーカーに取材した経験から「納豆は発酵食品なので、味が落ちることはあっても腐ることはない」と知っていたので、さほど心配はしませんでした(確かに味はいま一つでした)。

みなさんはどうですか?納豆の例は極端としても、消費期限をどのくらい気にしますか?

日本では近年、「食」に対する信頼が大きく低下しています。昨年はメーカーが製造年月日を偽造して、古い商品を新しく見せかけて販売したケースが次々と発覚しました。これでは、消費期限を守る意味がなくなってしまいます。今年1月には、化学物質が混入した中国産の冷凍餃子を食べた人に健康被害が出ました。

作る人、売る人、買う人それぞれの距離が広がるほど、こういう出来事は起きやすくなります。もちろん、作る人、売る人の倫理観は厳しく問われるべきですが、買う側の私たちも、自分を守るために知恵と五感を使わなくてはいけない時代になってきたのかもしれません。
(元村有希子・毎日新聞科学環境部記者=ロンドン留学中)