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「迷子石」って?
【今日のひとこと】 2008年6月10日

「迷子石」って聞いたことありますか?ある場所の石や岩が、その土地固有の地質とは違う地質を持っている場合、こう呼ぶのだそうです。

誰が迷子にしたの? 宇宙人? いえ、運んだのは氷河です。氷河が大きな石の固まりを削り取り、流れとともに別の場所に運び、氷河はやがてとける。そして石が置き去りにされたというわけです。少なくとも、最後の氷河期が終わった1万年前に起きた出来事です。

私はこの言葉をつい最近知りました。進化論の父、チャールズ・ダーウィン(1809-1882年)が生まれた、中央イングランドのシュルーズベリーという街を訪ねた時、観光案内所の人から「チャールズ少年が自然について関心を持つようになったきっかけの一つが、この石ですよ」と、石の場所を教えてもらいました。

教わった場所に、その石はありました。この周辺にはない地質で、はるか北のスコットランドやカンブリア地方に特有の地質なのだそうです。大人の腕で一抱え以上あるので、そう簡単には運べません。

チャールズ少年はさぞかし驚いたことでしょう。彼が答えを知っていたかどうかは知りませんが、遠い場所から大きな石を運んできた自然の力の大きさと神秘を感じたことは間違いありません。

迷子石は、ニューヨークのセントラルパークにもあるそうです。1万年前からも迷子とは気の毒な話ですが、そこに住む人間より長くそこにいるのに、「迷子」なんておもしろい言い方です。
(元村有希子・毎日新聞科学環境部記者=ロンドン留学中)