19世紀の終わり、光の科学に大きな謎が見つかりました。3月18日と5月19日に、「今日のひとこと」で紹介しました。科学者が努力して光の謎を解くことにより、新しい学問「量子力学」と「特殊相対性理論」を作り上げ、それをもとに20世紀の科学技術の驚異的な発展を引き起こしました。
21世紀を迎え、19世紀終わりに科学者がこぞって取り組んだ光の謎のような、新しい学問を生み、次の世紀の科学技術をまったく変えてしまうような「新しい謎」は20世紀末にあったのでしょうか。
アメリカの科学雑誌「サイエンス」は、科学のトップテンニュースを毎年選んで発表しています。私は、1998年のトップテンニュースに大いに驚いたことを今でも覚えていますし、その研究の発展を注目しています。3番目のニュースは、私たちが発表したニュートリノに関する研究だったので、1番目のニュースに本当に驚いたこともあります。
1番目の研究をちょっと紹介しましょう。
宇宙は137億年前に起きたビッグバンで誕生し膨張を始めました。現在でも宇宙は膨張を続けています。膨張のスピードは、宇宙の中にある物質の間に働く「万有引力」で決まっており、時間とともにだんだん遅くなるはずです。科学者はこのことを疑いませんでした。
アメリカの観測グループが、宇宙のかなたで時々起きる超新星爆発を多く観測し、宇宙の膨張スピードが宇宙の過去にどのような値だったかを観測し、現在の膨張スピードと比較しました。1998年に発表した観測結果は、
宇宙が膨張するスピードは、減速ではなく加速している
という驚くべき結果でした。
宇宙は万有引力でなく「斥力」が支配している
と言い換えることができると思います。
私は、19世紀末の光の謎に匹敵する謎が、この新しい宇宙の謎にあると思います。この謎を解くために多くの科学者が働いていますが、まだまだ多くの若者が謎の解明に参加する必要があります。
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