科学の世界では、物理的な量をはかるのに国際単位系(SI単位系)をつかいます。たとえば長さの単位はmです。
しかしSI単位系をきめた近代科学以前にも、ものの大きさをはかる単位はありました。尺という漢字は広げた親指と人差し指のすがたからできた象形文字です。もっとも、ヒトの大きさはさほど変化しなかったのに、1尺のながさはどんどん伸びてきたようです。フィートはかかとからつま先までの長さです。きっと大足自慢の人が決めたのでしょう。
単位時間あたりに出すことのできるエネルギー(仕事率)をはかる単位は馬力で、一匹のウマがずるずる重いものを引きずる仕事がその単位のおおもとになっています。火事場の馬鹿力(仕事率)といいますが、短時間であれば10倍の仕事率をこなせます。ヒトは普段は0.1馬力の生物ですが、そんなことで「瞬間1馬力」の能力があります。
ヒトは100W (1 秒あたり100J)、大きな蛍光灯2本分です。みなさんの頭から光はでませんが、頭の上には、100Wで暖められた空気の上昇流ができています。ヒトは食物の化学的エネルギーをからだにとりこみ、それを酸素でもやして、1日あたり0.5
kg の二酸化炭素を口からはきだします。ヒトは石油でいえば 0.2リッター/日です。100馬力の自動車は、100頭立ての馬車、ヒトだったら1,000人力。毎日2リッターの石油をあなたが自動車でつかうとしたら、もしそれをバイオ燃料におきかえるなら、10人分の食料をつかってしまうことになります。
現在の地球での一人あたり耕地面積2,300m2から推定すると、100Wのヒトの食料(と酸素)をつくるには、桁として1,000,000W
(1MW)の太陽光がいります。青森にある環境科学技術研究所の閉鎖型生態系実験施設(http://www.ies.or.jp/japanese/research/research_22.html)では、吐き出した二酸化炭素から酸素に変換したり排泄物から食料作物をつくるのに、人口光による植物の水耕システムと付属の大きな化学工場を使っています。この人工的なシステムでも、1人の生命を維持するのにおよそ0.75MWをつかうとのことです。
わたしたちの命とくらしがどのようにささえられているか、ヒト基準単位系をつかってふりかえるのもよいかもしれません。
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