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「むずかしい!」そして「おもしろい!」―理化学研究所神戸研究所  再生・発生科学総合研究センター(CDB)訪問―
【今日のひとこと】 2008年7月29日

7月15日、僕は理化学研究所神戸研究所の発生・再生科学総合研究センター(CDB)で、刺激的な講義と実習を体験してきましたので、ご報告したいと思います。

僕の高校には、総合学習の一環として、社会のいろんな分野で活躍されている方々の講義を聞いたり、学校外の施設を見学したりする土曜講座という時間があります。人気のある講座は申し込みが殺到して抽選になったのですが、僕は運よくCDBを訪問する15人のメンバーに入ることができました。

僕たちを迎えてくださったのは、哺乳類生殖細胞研究チームのチームリーダーで、僕たちの学校の先輩でもある斎藤通紀先生です。僕たちが訪問した直前の12日に、斎藤先生のチームが生殖細胞の誕生に必須な遺伝子「Prdm14」を発見されたことをテレビや新聞で目にしたばかりでしたので、「研究の最前線におられる研究者の話を直接聞けるんだ」とワクワクしました。
      
蛍光免疫染色による大腸ガン細胞
(中央が分裂期の核、緑が微小管)
ES細胞の歴史
斎藤先生は、「ES細胞の歴史」について講義をしてくださいました。これからの医療、ひいては人類の未来を大きく変えるかもしれないES細胞やiPS細胞が生まれてくるまでには、たくさんの研究が積み重ねられてきたことがよくわかりました。

そのあと、蛍光免疫染色を用いて細胞小器官を観察する実習を行いました。蛍光免疫染色とは、色素をくっつけた抗体を用いて、抗原抗体反応により特定のタンパク質を染色する方法です。蛍光顕微鏡を使って、微小管やDNAなどの写真を撮りました。分裂期の細胞はとてもきれいでした。

クロマチン動態研究
さらに、クロマチン動態研究チームと胚誘導研究チームを見学しました。

クロマチン動態研究チームでは、チームリーダーの中山潤一先生が、遺伝子配列の変化を伴わない情報の記憶と発現のメカニズム(エピジェネティクス)について講義してくださったあと、研究室を案内してくださいました。クロマチン(DNA核タンパク質複合体)の構造の変換が、遺伝子の発現を制御しているなんて、とてもおもしろいと思いました。まだわからないことが多い研究分野とのことですので、これからが楽しみです。

胚誘導研究
胚誘導研究チームでは、チームリーダーの佐々木洋先生が、生物の体がどのように作られるか(ボディプラン)について講義してくださいました。胚はとても小さいものなのに、その中でたくさんのタンパク質が順々に作られ、その濃度勾配によってさまざまな器官がスムーズにできてくるのは、本当にすごいことです。

実習中のようす
培養倒立顕微鏡(手前)とマイクロマニピュレーター(奥)

朝9時に集合して午後5時半の解散まで、たっぷりCDBを満喫させていただきました。いちばんの感想は、とにかく「むずかしい!」ということです。先生方の講義の中には、残念ながら理解できないことも多々ありました。でも、その次に感じたことは、「おもしろい!」ということでした。CDBには若い研究者の方が多く、雰囲気もとても自由で楽しそうです。大学院生も受け入れておられるらしいので、将来僕もここで研究できたらいいなあと思いました。

生命科学をもっと勉強したい、という思いを新たにした1日でした。貴重なお時間を割いて講義や実習の指導をしてくださった先生方に感謝しています。

記念撮影(中央が斎藤先生)
(中山 敦仁【1期塾生】)