_blank
     

ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム「21世紀の創造」

【今日のひとこと】 2009年10月21日

育成塾が終わって早2ヶ月が経ちましたが、皆さんお忙しい日々を過ごされている事と思います。

僕は10月3日に福岡大学で開かれたフォーラムへ参加してきました。会場は満席で、東京や北海道から来られた方もいらっしゃり驚きました。テーマは、「 科学する心、創造する力 ――21世紀を拓く若者へ 」でした。

先ず、「クォークの世代数を予言する対称性の破れの起源の発見」で2008年ノーベル物理学賞を受賞された、益川敏英教授のお話でした。

「創造する力とは、先ずターゲットを決めて、今何が必要なのかを客観的に見る事。研究する上で、具体的なものは他の具体的なものに応用できないので、成功した事例は残しておき、抽象的に見ていく必要がある。現在の物理学実験は大規模になっていて、1つの論文を1000人程で書くので、チームワークが必要であり、その点日本の研究者は優れていて、今後大きな期待が持てる。目標は高く持ち、手を着けるのは低いところから。難しくても目標を下げてはならない」と熱く語られました。

僕が育成塾で感じた、身の回りの不思議を色々な観点で見ていこうと思う気持ちが、より一層、質の高いものになりました。

次に、「多様な抗体を生成する遺伝学的原理の解明」で1987年ノーベル生理学・医学賞を受賞された、利根川進教授のお話でした。受賞後は、免疫学から脳科学に転進され、今回は脳科学を中心にお話してくださいました。

脳は、記憶・学習・決断・意識(自己意識)を抽象化する働きをしているそうです。「科学する心を養うには、若い可能性のガイドをしてくれる本や先輩に出合い、communicationをとって情報を得る事。つまり、educationが大事な基礎になるので、しっかり学び、また様々な経験もして欲しい」とおっしゃっていて、気合いが入りました。脳のどの場所で何を感じているのかを知る事は、障害や認知症で悩む人や家族にとって明るい光となるので、早く有効な方法が見つかると良いなと思いました。

最後に、パネル・ディスカッションで、益川先生と利根川先生の対談がありました。

「21世紀の科学には、何が大切だと思われますか?」の問いに先生方は、「これからは、環境を考える時代だ。環境を良くするための研究をしていかなければ大切な子孫を残せないので、人を育てる科学を基本に、科学と環境をもっと密接に考えなければならない」とおっしゃいました。

また、若い研究者へのメッセージとして、「全ての教科が好きな人は、そういないのだから、自分の最も好きな教科についてとことんやりなさい。色々な事を研究していく上で、10分の8は失敗するので、失敗した事で1回1回落ち込んでいたらやっていけない。失敗したら寝て、次の日からは新しい気持ちで挑戦していく事が大切だ。夢や希望、憧れる研究者へ近づくための努力は、決して苦痛ではない」とおっしゃいました。

先生方の素顔が少し見えながらの対談で、会場には笑いも溢れ、とても楽しく充実した時間でした。先生方の言葉を大切にして、これからを歩んでいきます。今後も、こういう機会があれば、是非参加したいと思います。
(丸山 夢都・4期塾生)