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千里ライフサイエンス国際シンポジウム |
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1月18日月曜日、入試で学校が休みの僕は、千里ライフサイエンス国際シンポジウム“Future Outcome of Stem Cell
Research Today”に参加しました。あの山中伸弥先生をはじめ、幹細胞研究の分野で有名な先生方の講演を聞いてきましたので、ご報告したいと思います。
と、偉そうに書いてみましたが、実はこのシンポジウムは講演がすべて英語で、しかも演者の多くは自然な速さ(僕にとっては聞き取れない速さ)で話をされますし、スライドもビュンビュン飛ばしていくので、正直わからないことの方が多かったです。でも、あの山中先生の講演を生で聞けただけでも感激ですし、慶応大学の岡野栄之先生をはじめ、世界の一流研究者の研究内容を聞くことができて、とても意義深いシンポジウムでした。
京都大学の山中先生は、iPS細胞の有用性と最近の知見について講演されました。iPS細胞はES細胞に比べて腫瘍形成率が高いのが欠点ですが、山中先生のグループは、リプログラミングに用いる4つの遺伝子のうちの癌原遺伝子を使用しない方法や、レトロウィルスの代わりにプラスミドを使って遺伝子導入する方法などによって、腫瘍形成が抑えられることをこれまでに報告しています。さらに最近の研究で、iPS細胞を神経に分化誘導させる過程で、同一のiPS細胞由来でも正常に神経になる細胞と腫瘍になってしまう細胞があること、それらの細胞間にはエピジェネティクスの状態に違いがあることを明らかにしました。今後は、分化誘導の途中の細胞1個1個の腫瘍形成可能性を評価する方法を開発したいとのことでした。
また、ハーバード大のK. C. Eggan 博士は、幹細胞を用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因・治療法の探索について講演されました。家族性ALSの約20%でスーパーオキサイド・ジスムターゼIという酵素の遺伝子(SOD1)に異常があることが知られていますが、Eggan
博士らはマウスのES細胞を用いたALSモデルを構築して、運動ニューロンに栄養しているグリア細胞でSOD1が変異して毒性SOD1タンパク質が産生されるために、運動ニューロンが障害を受けて筋肉を動かせなくなるという病態を明らかにしたそうです。
日・米・カナダ・オーストラリアの計6人の研究者の講演を聞き、ES細胞・iPS細胞などの幹細胞についての研究は、世界中ですごいスピードで進んでいることがよくわかりました。山中先生は情報交換のためによく海外に行かれるそうで、シンポジウムでも前日に海外から帰ってきたばかりとおっしゃっていました。他国あるいは他の研究チームはお互いがライバルであるけれども、同時に、意見を交換して研究を効率よく進めるための協力者でもあるようです。
さて、こんな一流の先生方がたくさん講演される立派なシンポジウムに、どうして高校生が参加できたの?と思われた方もあるのではないでしょうか。この国際シンポジウムは、千里ライフサイエンス振興財団という財団法人の主催で行われましたが、実は前もって申し込めば誰でも参加できて、参加費も無料というものだったのです。
千里ライフサイエンス振興財団では、国際シンポジウム以外にも日本語のシンポジウムや講演会を頻繁に開催しておられて、僕は昨秋にその存在を知って以来5つの講演会を聴講させていただきました。たいていは若手研究者が対象の講演会なのですが、思い切って申し込んでみたところ、参加を快諾してくださいました。毎回予習をして行ってもやはり内容が難しくて理解できないことも多いですが、研究者の先生方の最新の研究を聞かせていただくだけで楽しいですし、どれもおもしろくて、僕も将来研究をしたいという気持ちがますます膨らみます。
「東京近辺に住んでいたら、いろんな講演会や催し物があっていいなあ」と常々首都圏在住の人をうらやましく思っていましたが、僕の地元大阪でこんな素晴らしいところを発見しました。皆さんも家の近くで勉強できる機会を探してみて、「高校生・中学生じゃ無理かも」などと遠慮せず、思い切って問い合わせてみてください。意外に道は開けるかもしれませんよ。 |
(中山
敦仁【1期塾生】) |
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