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第3回「創造性の育成塾」夏合宿レポート(7) 8月9日(土)
【夏合宿レポート】 2008年8月09日
実験尽くしの1日

1・2時限目 「4次元時空と宇宙と人類の進化」
牧野崇 品川区立荏原第一中学校 教諭

地球の話から始めた牧野先生。

地球の1周は4万km。直径は1万2800km。太陽の直径は139万2000km。

大きすぎて掴みにくいこの数字のイメージをわかりやすくするように、太陽を1mとした時の数値を紹介しました。水星は4mm、地球は9mm、これでも、銀河系の果てである海王星までは3.2km離れることになります。

どのように説明しても、スケールの大きい宇宙。この宇宙はどんなところなのか、4次元のイメージ化を図ります。0次元にあるのは、縦も横もない点。1次元にあるのは、その点と点を結んだ線。2次元になり、その線を結び、面が生まれます。そして私達の生活する3次元には、その面と面が結ばれた立体が存在するのです。では、4次元の世界とは…。

「3次元の立体と立体を結んだのが4次元」という解説をもとに、4次元を立体的に表現してみることに。
ストローとモールをつなげて立方体を作り、いよいよ、その立方体同士をつなげて4次元の世界へ。

出来上がったのは、一つの立体の中に、さらに数多くの立体が存在するもの。4次元の世界を自分達の手で作り、表現した塾生たちは、模型の完成に、「おぉー」と感動の声をあげました。

そのほかにも模型を空間的に捕らえる実験をいくつか披露した後、人類の進化について、退化する痕跡器官がなくなった、未来の人間の予想図を紹介。古くからの宇宙人のイメージにも似ているその図に、塾生は笑いながらも未来の世界に想いを馳せていました。

3時限目 「生命を支える土」
下田治信 昭島市立福島中学校 教諭

宇宙の探査でも、生命体の存在を探すためには、まずその星の土を採取します。土は、「命と深く繋がっている」と紹介する下田先生。今日の実験授業のテーマはこの「土」です。

土の中にいる生物を取り出す、様々な方法が紹介されます。最初に紹介されたのは、ツルグレン法という、装置の上から土を電灯で照らし、光と乾燥を嫌って下にもぐってきた虫たちが、一番下の金網から下に落ちたところを採取するという方法。

この装置を仕掛けてから、次に紹介されたのは、ハンドソート法。土を細かくチェックし、自分の目と手で虫を捕まえて取り出すというもの。

バットいっぱいの土が一人一人に配られ、早速調査開始。土の中からは次から次へとミミズ、ダンゴムシ、ヤスデ、ムカデ、クモ、甲虫の幼虫が出てきました。普段土に触れる機会も減っている塾生たち。俄に教室は大騒ぎになりましたが、騒ぎながらも、やはり塾生たちの目と手は土に向かって虫を探し、採取していました。

今回の土は、合宿所は敷地内、東京など、先生が採取してきたもの。どの土からも、手を休める暇がないほど生命が見つかり、塾生は立体顕微鏡で、元気に動く虫たちを観察しました。

4・5時限目 「木炭とスチールウールの燃焼」
宮内卓也 学芸大学付属世田谷中学校 教諭
この時間は、少し生物から離れて、「燃える」ということについての実験。

まずはフラスコに入れた木炭を燃焼させ、その様子を観察します。この燃焼という現象を、もし化学の知識がなかったらどのように捉えるのか。科学史上で一時期、正しいとされ、その後の研究で間違いであることがわかった「フロギストン説」を紹介し、「時には疑ってみることも重要だ」と話しました。



後半は、その燃焼の反応を利用して、火薬を和紙に包み、線香花火を手作り。
提示されたグラム数を量り、和紙に包んで、外で火をつけ、観測した後教室に戻り改良を加える。
それを繰り返し、オリジナルの線香花火作りに一生懸命でした。
塾生たちは自作の花火に興味がわいた様子で、就寝前の自由時間に、再び花火実験をしていました。


6・7時限目「生物観察・花の実のつくり」
金井塚恭裕 新宿区立落合中学校 教諭
この授業のテーマは、「徹底的な観察」。生物の特徴をできる限り細かいところまで掴むのが目標です。

まずは、花の観察時に利用される、花式、花式図の解説。がく、花冠、おしべ、めしべを、それぞれの記号と数で式を作ります。その数字をもとに絵で表現したものが花式図。これは花式の数字をもとに、花葉の配列について花を真上から見た状態を表します。

これらを用いて、早速カタバシの花を観察。小さな花をルーペで観察し、ピンセットで分解する作業に、真剣に取り組んでいました。花が開いていなかったり、細かな作業に四苦八苦しながらも、きれいにスケッチをとり、ノートに整理していました。

後半は、今度は実を見て花を想像する作業。机の上には、きゅうり、ピーマン、大豆、オクラ、トマトなど、普段良く目にする野菜が並びます。課題は、「これらの実を観察し、花を想像してスケッチすること」。

これらの野菜の花の実物を見たことがないという塾生も数多く、手がかりになる部分を必死に探していました。最初は表面、そして、中を切ってのぞき、がくの数や、種の入り方など、細かな観察の末、想像した花をノートに描きます。単なる想像ではなく、根拠に基づき描いた花の絵は、どれも特徴を捉えたものでした。

金井塚先生は、最後に「観察は何の研究においても基本の基。土台のないところに家は建たない」と、正確な観察の重要さを語り、まとめました。

8時限目 「夏の夜空」
瀬戸治夫 江戸川区立小岩第二中学校 教諭
暗くなり始めた合宿所の中庭に、望遠鏡がずらりと並びました。

最初に教室で、星の見方や、見える星座の説明などをした瀬戸先生は、その後、塾生を中庭に導き、さあ、観察。夕方に、ここ数日続いている突発的な雷雨が通り過ぎたばかりで、観測は難しいかと思われましたが、何とか決行。望遠鏡に目をつけた塾生たちは、月や木星に望遠鏡を向け、歓声を上げていました。

19時25分前後には、富士山付近に国際宇宙ステーションが目視できる予報。中村日出夫・JAXA宇宙教育センター 参事のアドバイスをもとに、夜空に目を凝らす塾生たち。しかし残念ながら、雲に阻まれ、宇宙ステーションを目撃することはできませんでした。

星座の観察には、また明日挑戦します。

合宿も6日目を迎え、いよいよ親密さを増す塾生たち。
残りの授業、生活も有意義に過ごしてもらいたいものです。

「塾のワンシーン」コーナー

塾生担当クルーは総勢23人「こんな生徒達だったら…」

塾生49人のお世話をするのは、全中理(全国中学校理科教育研究会)の先生達。

塾期間中、平均2泊3日の交代で1日平均7-8人の先生が張り付いています。朝7時のラジオ体操、朝礼に始まり、講義や実験の準備・進行、富士山自然観察など校外授業の引率、塾生の生活の指導、夜10時半からの打ち合わせまで、塾の運営を引き受けています。

食事、授業、宿舎などでの行動を通じて、健康状態など、一人一人の目配りも欠かせません。そのうちの何人かは、実験講座の先生も担当しています。

メンバーのほとんどが校長、副校長、主幹で、うち3分の1が文科省認定の中学校の理科の教科書の執筆者、指導要項作成委員で、理科の“カリスマ教師”です。

3年前の塾開設以来、運営のまとめ役でもある中村日出夫・元全中理会長は「多忙な夏休みの中だが先生たちが参加してくれています。ノーベル賞受賞者や高名な学者たちが講師である他、全国から選抜された塾生達の様子も知りたい、と多くの理科の先生たちが塾参加を希望しています。それだけ塾が注目されているのです」と話しています。

先生達は口を揃えて「打てば響く優秀な生徒たちで、注意すると、すぐ直す。こんな生徒たちを教えられたらなー、もっと多くのこと、掘り下げた内容が教えられるのだが…。」と、塾生を評価していました。

(事務局・伊奈恵子)