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第3回「創造性の育成塾」夏合宿レポート(8) 8月10日(日)
【夏合宿レポート】 2008年8月10日
怒涛の授業ついに修了~最後の実験と、閉塾式

1・2時限目 「染色体の観察」
山口毅 中野区立第八中学校 主幹

今朝の実験は、DNAの抽出。

この合宿中、繰り返し授業に出てきたDNA。それを野菜から自分たちの手で抽出します。

今日使用する野菜はブロッコリー。芽を切り取り、すりつぶし、そっとかき混ぜつつ、水、界面活性剤、食塩水、最後にエタノールを加えると、もやもやしたものが液体の上澄みに出現。

これが、ブロッコリーのDNAです。


今回の実験は、「身近なものでできる」ということがもう一つのテーマ。使った実験道具は、プラスチックのコップに食卓塩や割りばしなど、家にあるものや100円ショップでも買えるものばかり。

塾生たちはこれまでの授業の中で出てきた、生物の全ての情報を持つDNAを前にし、感動の声を上げました。

3時限目 「薄層クロマトグラフィーによる光合成色素の分離」
安川礼子 千代田区立九段中等教育学校 教諭

続いては、植物の色素を分離する実験。植物の特性や歴史を紹介した後、早速実験に取り掛かりました。

アカジソやアオサなどの植物を、シリカゲルと共にすりつぶして粉末状にし、薬品と混ぜてTLCシート(薄層プレート)吸い取り紙に付着させる。そのTLCシートを、エタノールなどの溶液の入ったビンにそっと入れて、時間を置くと、色素別に発色します。


4種類の植物で実験し、全ての植物で反応したのは光合成に必要なクロロフィルa(葉緑素)という色素。

手順の多い実験でしたが、塾生は協力しながら効率的に進めていました。

最後にそれぞれの植物の色素から、生活環境との関係も推測し、さらに植物の進化を考察し、授業を終えました。

4・5時限目 「水の電気分解」
宮本一弘 開成中学校・高等学校 教諭

いよいよ最後の授業となったこの時間は、水の電気分解の実験。

この時間も、家庭にあるものや、すぐに手に入るものを使用します。

お弁当に付いているしょうゆ差しにクリップを刺し、2つくっつけました。そのしょうゆ差し容器に硫酸ナトリウム水溶液にBTB溶液を加えたもの(緑色)を注入し、同水溶液に浸して電極(電池)につなぐ。

するとすぐに陰極は青色に、陽極は黄色に変化。両極から気体が発生し、その体積にも差が見られました。

この結果を受けて、陰極と陽極でどのような反応が起こっているのかを考察。なぜ、それぞれ色が変化したのか、何の気体が発生したのかを考えました。

2つ目の実験も、同じく小さなしょうゆ差しとクリップ、電池を使った実験。しょうゆ差しにクリップを刺して今度はミョウバンの水溶液で満たし、電池につないで電気分解。すると、発生した気体でしょうゆ差しがいっぱいに。そのしょうゆ差しの気体を火に近づけて押し出すと…。

ポンッという小さな爆発音が教室に響きました。

発生した気体は水素と酸素。女子塾生たちは恐る恐る火に近づき、爆発の音と衝撃に後ずさり。でも、楽しそうに実験をしていました。

合宿中に数多くの実験を行い、その手際も飛躍的に良くなった塾生たち。隣同士や先輩、後輩同士で助け合って作業を進める姿も数多く見られました。最後の実験は今までとはちょっと違う化学的な実験でしたが、興味を持って正確に手順を追っていました。室内に響く「ポンッ」「ポンッ」の音で、第3回「創造性の育成塾」夏合宿全授業は締めくくられました。

6・7時限目「創造性の育成塾」まとめ
9日間の合宿もいよいよ終わりに近づき、授業は今日で全て修了しました。

この時間は、塾生たちにあらかじめ書いてもらった「創造性の育成塾」夏合宿の感想を全員発表しました。

夏合宿に応募した理由、興味がある分野、将来の夢、感動した授業の内容は、まさに十人十色。しかし、今日まで8日間を共に過ごした49人は、口をそろえて、「刺激的な毎日を送った」「夢や考え方など、将来に役立つ事をたくさん得ることができた」「全国から来た、仲間と呼べる人たちにたくさん会い、長い時間共に生活できたことが、自分にとっての宝物になった」「生物、宇宙の話をたくさん聞き、実験を行い、難しかったが、たくさんの興味を持ち、勉強に前向きになることができた」と、「『創造性の育成塾』に参加してよかった。得たものを将来に活かしていきたい」と話しました。

これらの感想を受け、龍崎邦雄・全国理科教育研究会前会長は、「『創造性の育成塾』が目標としていることを、全員がしっかりと受け止めてくれている。自分で体験したことは忘れない。ダイヤの原石である皆さんに、夢や希望を持って頑張ってもらいたい」と励ましました。

時間を大幅にオーバーして行なわれたまとめの時間。ここで発表された感想などは、後日HPで紹介する予定です。


閉塾式
有馬朗人 「創造性の育成塾」塾長
塾生が揃って待つ教室に、忙しい中、この閉塾式のために駆けつけた有馬塾長。

修了証書授与では、一人一人の名前を呼び、「よく頑張ったね」「お疲れさま」と声をかけ、長い期間授業を受けた塾生に笑顔を向けました。




その後、今夏合宿のテーマである「生物学」について、「生物はもとに戻れない」など、他の学問との比較をしながら、「生物には、たくさんの身近な面白い問題がある。医学や農業など、いろんな応用もある」と話し、昨今の解決すべき問題として、地球温暖化やエネルギーの問題に触れました。

これらの大きな問題にも「基本も大事にしながら、応用を考えて、難しい問題を解決していってほしい」と期待し、「体に気をつけて。またいつか会いましょう」と、塾生に言葉を贈り、第3回「創造性の育成塾」夏合宿を閉じました。


「塾のワンシーン」コーナー

羽ばたけ!たくさんの可能性を秘めた49人

閉塾式が終わったあと、全員で星の観察にリベンジ。

今日も快晴とまではいきませんでしたが、月と、木星とその衛星を見ることができました。

塾生たちは、普段の星空を見上げるのとはまた違う、大きな天体望遠鏡を覗き込んでの星空に感動に声をあげていました。

その塾生たちに向けてカメラを構える私に、興味を持って近づいてきてくれたのが安田風眞くん。

どうやら、カメラに興味がある様子なので、カメラを渡して撮影してもらいました。
緊張しながら撮ってくれたのが右の写真。安田くんはとても感動し、何度もお礼を言ってくれました。

生物好きということを共通点に集まった49人。しかし、陸上部に所属している塾生や、ピアノの演奏が得意な塾生、ゲーム、アニメが好きな塾生など、その興味は尽きません。

たくさんの可能性を秘めた49名。 この合宿で学んだ多くのことを活かし、それぞれの得意分野で大きく羽ばたいてくれることを期待しています。

(事務局・伊奈恵子)