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国際科学オリンピック 日本開催シンポジウム開かれる
【第16回】 2008年4月1日

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日本で来年2009年に「生物学オリンピック」再来年2010年に「化学オリンピック」が連続開催されるのを支援する「日本科学オリンピック推進委員会」主催の『シンポジウム』が3月30日午後、東京池袋の立教大学で開かれました。

日本科学オリンピック推進委員会は、国際大会への参加が出遅れ、国内でも認知度が低い「科学オリンピック」を、日本開催を機会に各界を挙げて支援するため、ノーベル物理学賞受賞者の江崎玲於奈・横浜薬科大学長を会長に各界の代表を委員に昨年3月、発足したものです。

委員会から有馬朗人・科学技館長、ノーベル化学賞受賞の野依良治・理化学研究所理事長の2人が特別講演をし、「科学技術の力が地球(の危機)を救える」ことを力説しました。

「原子力の利用を」―有馬先生
「創造性の育成塾」塾長の有馬先生は、「世界は人口が増え、エネルギーの消費が増大し、地球の温暖化が進む。地球が大変心配だ。CO2の削減、新エネルギーの開発を進めなければならないが、現況では解決には程遠い。化石燃料にも限界がある。その中で原子力発電を見直す(利用する)必要がある」と訴えました。そして「50年先、CO2をどんどん出しても良い世界を創ろう」と、科学技術の推進を呼び掛けました。

「Chemistry=The Key to our Future」―野依先生
野依先生は「憧れと感動、そして志」と題して、先輩科学者たちとの遭遇からノーベル賞受賞への道を振り返りながら、「現在(の日本に)は大人物がいない。なぜか、根底から理解するという覚悟が足りない。よって立つ正統性を疑うことから始める、ということが必要である。自らの力で生き、自己実現、社会貢献するために取組まなければならない」との心構えを科学を目指す若者に求めていました。

また、「化学とは無から有を生む学問」とし、Chemistry=The Key to our Futureを引用して、「新しい機能を持った物質を創り出すこと」と示唆しました。

日本開催の受け入れ態勢の整備進む―生物学オリンピック・化学オリンピック
後半は、日本開催が決定している生物学オリンピック、化学オリンピックを中心に、情報・物理と、各オリンピックの取組状況が説明されました。生物学、化学では、日本開催に向け、会場となる筑波大学、早稲田大学、東京大学の整備や、既に決定した大会中のスケジュール、また他国の選手と交流するためのイベントなどを紹介しました。

国際大会の日本開催の予定がありながらも、まだまだ参加人数の少ない科学オリンピック。各オリンピックとも、オリンピックに出場し、国際的に同じ興味を持つ友達ができることの意義の大きさを語り、参加を呼びかけていました。

「感動の大きい国際大会」―参加経験者によるパネルディスカッション
また、参加経験者によるパネルディスカッションでは、1999年から5年連続で数学オリンピックでメダルを獲得し続けてきた大島芳樹くん、第15回・16回国際生物学オリンピック日本代表の佐藤博文くん、第37回・38回国際化学オリンピック日本代表の永田利明くんら3人が、自身の経験からオリンピックで得たことを語りました。

3人は共通して、「きっかけは小さかったり、始めから結果が出なくても、国際的な科学の大会に出るという経験が後に与える影響は大きい。ぜひチャレンジしてほしい」と述べました。大会に出た感想として、「国際交流する上で、やはり英語は重要。でもそれ以上に、言葉の壁を越えて、大会に出た感動を共有できる」と、その感動が大きいことを語っていました。

科学オリンピックへチャレンジ―塾生の感想
会場には「創造性の育成塾」の塾生も参加しており、塾長の有馬先生の話や、野依先生の話に、「育成塾のときとは違った視点から話が聞けてよかったです」と述べ、実際のオリンピック出場者の話を聞き、「生物の実験が好きなので、話を聞き、自分も頑張りたいと思いました」「国際的な大会に出て、いろんな人に出会えるというのが魅力的だと思いました」と、科学オリンピックに向け、意欲を燃やしていました。


さまざまな地球規模の問題を、解決に導く鍵となる科学技術。日本の中高生の科学に対する興味が深くなることで、将来的に日本の科学技術がさらに磨かれ、国力の向上が期待できます。
(事務局:伊奈恵子)