関東でもとうとう梅雨入りし、雨空曇り空が続きますが、皆さんの地方はいかがでしょうか。
6月に入り、今年の各科学オリンピックの国際大会まで約1ヶ月となりました。各選手、全力を出し切れるように準備を整えていることと思います。
さて、今年のオリンピック選手や、歴代の選手を見ていると、いくつかの高校から、何人もの選手が出ていることが分かります。しかし、日本科学技術振興財団のお話だと、一部の学校から特に応募者が多いわけではなく、私立・公立などにおける応募者の比率も、ほぼ同じとのことでした。
ではなぜ、一部の学校から多くの選手が選ばれるのでしょうか。
学校での教育に関係があるのではと思い、筑波大学附属駒場高等学校生物科の仲里友一先生にお話を伺いに行きました。
科学オリンピックに向けた特別教育は特になし
最初に仲里先生に、科学オリンピックに向けて、学校で特別な教育をしているのでは?と伺うと、間髪をいれずに「何もしていません」とのお返事。生徒に科学オリンピックなどのイベントを簡単に紹介することはあっても、参加を薦めたり、応募に向けて特別な教育をするということは一切ないそうです。
科学オリンピックにチャレンジするということは、高校で学ぶこと以上のことを多く学ばなければなりません。それは大変な労力を要することなので、例え参加を薦めても、それだけの意欲がなければ乗り越えられないと、仲里先生は語ります。
実験の多い普段の授業
では、普段の理科の授業に何か秘密があるのでしょうか。
他の学校と、筑波大学附属駒場高校の1番大きな違いは何かということを仲里先生に伺うと、何よりも「実験が多い」こと、とおっしゃられていました。同校では、理科の授業の半分から1/3が実験の授業。
実験を多くする理由は、「本物を見る」・「現象を実際に見る」ことを何よりも重要なことと考えているからです。特に生物は、一つの現象に対して、様々な要因が考えられ、また教科書通りにうまくいかないこともあります。これらのことを、自分の目で見るということを重要視しているからこそ、実験の授業を大切にしているようです。
「科学者の視点」での実験
そして、実験をする時にもっとも重要なことは、「科学者の視点」で実験をすること。同校での実験は、全て高校の教科書に載っているレベルのもの。特別な実験をしたり、難しい実験をするわけではありません。
しかし、その実験を行なう時に、その過程や結果から何を考えるのか。また、どんな答えを導くのかということを、生徒一人一人が考える時間をとても大切にしています。そうすることで、頭だけではなく、大きな感動や、なぜそうなるのかということと共に学ぶことができるからだそうです。
科学オリンピックを意識して授業をすることはありませんが、そのような一連の授業をしていた結果、科学オリンピックの選抜問題が、学校の期末試験と同じような問題であったりすることもあるそうです。
科学オリンピックで求められている能力を伸ばす環境
生徒の「感動」や、「本物に触れる」ということを何よりも大切にすることで、生徒の学ぶ意欲やチャレンジ精神を伸ばす環境が、この学校にはあるようです。科学オリンピックに多くの選手を出している背景には、国際科学オリンピックの求める「創造力」や、「自ら学ぶ姿勢」を培う環境がありました。
仲里先生は、同校に限らず、少しでも多くの高校生に「実験の感動に触れてもらいたい」と語ります。科学オリンピックは、普段、高校ではなかなかできないような実験に触れる大きなチャンス。教育の現場に立つ先生も、多くの生徒が科学オリンピックにチャレンジすることを期待しています。
筑波大学附属駒場高等学校は、2002年にSSH(Super Science Highschool)に指定されてから、今年で7年目を迎えています。SSHに指定されていることは、同校での教育にどのような影響があるのでしょうか。次回、同校の、SSHとしての現状をお伝えします。 |