今回は、SSH(Super Science Highschool)としての筑波大学附属駒場高等学校の様子をご紹介します。
SSHとは
同校は、2002年にSSHに指定されました。文部科学省がSSH制度を開始した同年、最初の指定校26校のうちの1校です。
SSHとは、文部科学省が、「高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成」という目的で、全国から指定された高校のこと。
指定された各高校には、1校につき約1000万円の予算が充てられ、科学教育のために使うことができます。指定校は年々増え、平成20年度は全国で102校が指定されています。指定期間は当初3年間でしたが、同校は、その後2年間の継続指定、更にその後、再度5年間の新規指定を受け、現在は7年目、2回目の新規指定の2年目を迎えています。
SSHに指定されて
SSHになって1番大きく変わったことを伺うと、筑波大学附属駒場高等学校生物科の仲里友一先生からは、「実験の質が変わったこと」との答えでした。指定される前から、理科の授業の1/3~半分が実験であった同校。実験の“質”とは、どのように変わったのでしょうか。
1番大きな影響を与えているのは、実験の機材。国からの予算で、普通の高校にはない機材を購入することができるようになりました。教科書のコラムで読むだけだっだ様な実験も、実際にできるようになったそうです。例としては、生物「プラスミドDNAの制限酵素切断と電気泳動」・化学「エステルの合成と赤外吸収スペクトルの測定」などなど。
SSH・筑波大学附属駒場高校の理科教育
筑波大学附属駒場高校では、文系と理系の志望を出すのは高校3年生になってから。そのため、それまでは理系の授業も全員が同じように受講します。文系志望であっても、このような専門的な実験の授業も受けるのです。
これが同校の特異なシステム。他のSSH指定校では、SSHにおける特別クラスが合ったり、コースに分かれていたり。
しかし、同校では、文系の生徒も、理系の考え方(「科学者の視点」)に触れることも重要で、理系の生徒も理論的に考えることも必要という方針のもと、文系志望の生徒と理系志望の生徒が一緒に授業を受けています。
そのため、文系志望だと思っていても、授業を受けているうちに理系に転向する生徒も多く、また逆に、理系志望だと思っていた生徒が文系に転向することもあるそうです。
この、“自分が何に向いているのか”を判断できるようになったのも、SSHに指定された成果と、仲里先生は語ります。理系にもやはり“向いている”生徒と“向いていない”生徒がいて、中高であまり実験に触れずに大学に進学すると、急に複雑な実験を扱うようになり、初めて“向いていない”と思う生徒も少なくないそうです。しかし、中高時代からこのような複雑な実験にも触れ、その経験を通して、「面白い」と思うかどうかで、自分は本当に理系に“向いている”のかということを判断できるようになったと話されていました。
そのような教育を受け、大学生、社会人になった大半の生徒は、SSHに指定されてからの授業を受け、「良かった」との感想を持つそうです。
中高という感受性の豊かな時期に、実験を行い、「本物に触れる」「現象に触れる」こと。この体験が何よりも重要と、仲里先生は強調します。
今年から、2次試験に選抜される人数が25人から80人に増えた生物学オリンピック。全国の高校生が多くの実験に触れるチャンスに恵まれると、仲里先生も評価されていました。
実験を通じて、たくさんの感動を得る。このような普段の授業が、科学オリンピック日本代表選手を多く出す秘密かもしれません。
今後も、科学の優秀な人材を期待されているSSH指定校から、多くの生徒がチャレンジすると思われます。 |