今日は東京では今年初めての真夏日になりました。皆さんの地方はいかがでしょうか。
今回は、5月末に発売された、「生物学オリンピック問題集」のご紹介をします。この問題集は、過去の国際生物学オリンピックと、国内の大会である生物チャレンジの公式問題集として発行され、国際生物学オリンピック日本委員会委員長の毛利秀雄・東京大学名誉教授や、同オリンピック2009組織委員会副委員長の浅島誠・東京大学副学長のお話なども掲載されています。
生物学オリンピックの詳細や、これまでのデータ、参加方法、2009年に日本で開催されるつくば大会の情報など、生物学オリンピックの「いろは」が詰まっています。
問題集としては、1.動物の発生と生理 2.植物の構造と機能 3.遺伝と細胞 4.系統・進化・行動 5.生態 6.実験問題 に分かれて紹介され、それぞれ解説・公式ガイドがついています。また、巻末には過去の受賞者へのインタビューや、参考図書がついていたりと、盛りだくさんの内容です。
この問題集を編集されている国際生物学オリンピック日本委員会の奥田宏志・芝浦工業大学柏高校教諭は、「国際生物学オリンピック(IBO)の日本における予選は、今年から「生物チャレンジ」という名で、第一次試験(今年は7月20日)からスタートします。第一次試験は理論問題として出題されますが、過去の問題は国際生物学オリンピック日本委員会(JBO)のHPに掲載されているだけでした。このたびIBOが2009年に筑波大学で開催されこともあり、受験生が過去の国内の一次予選問題や国際大会の理論問題を知る手段として公式問題集をつくることとなりました。問題を解くには知識も必要ですが、問題集では知識だけでなく、考え方を学べるような工夫もされています。中学、高校生の皆さんに活用されて、考える力を養ってもらえればと思います。」と、この問題集発売の意義を語られました。
また、問題集の中から奥田先生に1問を選んでいただき、ここで特別に、問題と解説をご紹介させていただけることになりました。紹介する問題は、問題集の92ページ、2007年国際生物学オリンピック日本国内1次予選(現・生物チャレンジ)の出題から、問11です。
下の図は、ハワイ島マウナ・ロア山で1958年以来観測されている大気中の二酸化炭素濃度の経年変化を示している。この図から2つの重要な特徴を読み取ることができる。その第一の特徴は年々二酸化炭素濃度が上昇し続けていることである。第二の特徴は二酸化炭素濃度が毎年、春の極大と秋の極小を規則正しく繰り返していることである。この図を見ながら、問に答えよ。
問)大気中の二酸化炭素濃度が増加するほど地球の表面温度は上昇する。この地球温暖化の進行によってもたらされる陸域生態系の変化の中で、地球環境に与える最も重要な変化は次のうちのどれか。
A. 熱帯林の成長が加速される。
B. 温帯や亜寒帯地域の森林の成長が加速される。
C. 植物の呼吸や土壌有機物の分解が加速される。
D. 土壌中への有機物の蓄積が加速される。
以下が、これに対する答えと解説です。
答え:C
温暖化の進行の陸域生態系への影響に関しては、まだ解明されていない点も多数あります。温度の上昇は生物の代謝活動を活発にさせるため、炭素の循環と関係する光合成と呼吸も活発化します。そのなかでも植物の呼吸や土壌有機物の分解の加速は、炭素の循環に対して最も重要な変化と予想されています。一方、温帯域や亜寒帯地域では気温の上昇に伴い、植物の生長が促進する可能性があり、さらにこれにより土壌への有機物の供給量も増加する可能性もあります。これらは、陸上生態系が現在よりも多くの二酸化炭素を吸収する可能性を予想させるものです。しかしながら、これらの変化がどの程度か、さらに長期的に持続するかなど、現時点では断定できない部分も多く残されています。(出典:生物学オリンピック問題集) |
問題集の定価は1600円+税。羊土社から出版されています。詳細・購入はこちらから。
また、今年の「創造性の育成塾」夏合宿では、この問題集を参考書として皆さんにお配りする予定です。
初めて発売された、生物学オリンピックの公式問題集。皆さんもこれで予習をして、オリンピックにチャレンジしてください。
|