第1回夏合宿(関本・有馬塾) ⑤(8月5日)

富士の大自然を全身で感じた日

今日は、課外活動の1日。
午前中は富士山に登った。

 

富士山の環境問題

富士吉田登山口の5合目へと続く道、スバルラインをバスで移動中、昨夜、講話をした大貫先生が、「観光地」富士山に影を落としている環境問題について話をしてくれた。
「このスバルラインは、1964年に完成した。原生林を切り開いて作ったものだから、(生態系が変わって)シラビソなどの木が立ち枯れするなど問題になった。」
「富士山のトイレの問題も解決のために、5合目より上は有料トイレになった。」

※富士についてからガイドに聞いたのだが、以前は、トイレを水洗にできないので垂れ流しだった上に、寒冷な気候のため、バクテリア分解されることもなかったため、汚物がそのままの状態で残っており「(散乱する)トイレットペーパーが、富士山の涙のよう」だったという。現在は、し尿をバクテリア分解する『バイオトイレ』を設置し、大きな成果を得ているそうだ。

 

『超美人の山』の6合目まで登山

 ピークを越えたとはいえ、8月第1週の土曜日。5合目は、多数、多国籍の観光客でにぎわっていた。
3グループに分かれて6合目まで登山。各グループにガイドのボランティアスタッフが付いて、説明を聞きながらの登山となった。
「富士山は、世界の単独峰の中で最も安定した形の山と言われています。女性で言えば『超美人の山』です。今のかたち(新富士山と言われる)になるまでに3回の大噴火を繰り返してきました。3回目の噴火は、5000-1万年前。だから氷河期よりも後です。ですから、(それより前に今の形になっていた)アルプスの山々とは生えている植物が全く違います。ライチョウもいません。」 (5合目と6合目の中間付近、標高2350メートル付近で)「山の表面にぽつぽつと(斑点のように)植物の群落ができています。あれはパッチと言います。噴火の時に堆積したもろい火山灰の上に生えているので、根が深いんです。私が子供の時は、こんなに生えていませんでした。こういうところに地球温暖化の影響を感じます」
(6合目に着いてスナック菓子の袋を見せながら)「この袋を見てください。気圧が低いから袋の中の空気が膨張してこんなにパンパンになってしまいました。」

 下山後、ある塾生が「(近くでは)富士山は黒かった。でも遠くからみたら青いのは何でですか」と逆質問。“科学少年”らしい感想だった。
富士山を後にする間際、ガイドの1人が塾生達に「富士山は世界に誇るべき山です。だから(ここにきた)あなた達も世界を代表する人になってね。」と別れの言葉を贈っていたのが印象的だった。

 

溶岩の上にできた森を観察

 次に、山梨県環境科学研究所を訪問した。
この周辺の地形は、およそ1千年前、富士山中腹、剣丸尾火口が噴火した際に噴出した溶岩の上にできた地形。
研究所の敷地内にある原生林の入り口で昼食を取った後、スタッフに案内を受けながら原生林の中を見学した。生まれてからおよそ1千年の、「成長途中の森」であるため、土は少なく、ごつごつとした地肌がところどころむき出しになっていて、その表面にはコケがはりついていた。
「溶岩は、水がしみこみやすい。そのため、富士の水は、浸透する中で不純物がこされて、きれいなおいしい水ができます。これも富士の恵みです。みなさんが観光に来てくれるのも、富士の恵みです。」
 「岩の表面に張り付いているコケは、洋服みたいなもの。地表を覆って水分を保ちます。アカマツやミズナラは水や栄養が少なくても育ちます。このへんのアカマツは、樹齢がおよそ100年、高さは20メートルあります。木の葉が何回も枯れて、地面に積もって、土ができていきます。」
このほか、芋虫から食べられるのを防ぐために特有の匂いを出す植物の匂いをかいでみたり、キツツキの鳴き声に耳をすますなど、富士の裾野の自然を体中で感じた。

 夜には、河口湖畔での花火大会「河口湖湖上祭」を見に行った。
塾生達は、登山の疲れも感じさせず大喜びだった。
※「スーパー先生と子どもたち」(2006年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。
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