
2時限目は、東京大学名誉教授、前日本哲学学会会長の一ノ瀬正樹先生の講義が行われました。

哲学とは「物事の前提について問い、反例がないかを常に問う学問」であり、「当たり前や常識を問う姿勢」がその根幹にあると説明していただきました。「昨日の私と今日の私は同じなのか」という問いや、数列から規則性を見いだす例題を通して、人間の認識が暗黙の前提に支えられていることが示されました。

「1、2、4、7、11、16、22」という数列を例に、人間が規則性を前提として未来を予測する思考の特徴が取り上げられました。次の数を29と考えるのは、「これまでと同じ規則が続く」という前提を無意識に受け入れているためであり、その規則性自体も人間の解釈に依拠している可能性があります。この議論は、過去の経験から未来を確実に導けるのかというデイヴィッド・ヒュームの帰納の問題で、経験に基づく知識が本質的な不確実性を含むことにつながります。

また、ゲノム編集やデザイナーベビーを題材としたグループディスカッションを通じて、科学技術の発展を倫理的・医療的・社会的な観点から捉え、多様な立場を踏まえた議論が行われました。

本講義では、哲学を抽象的な学問としてではなく、科学を含む幅広い分野を考察する思考法として位置付け、前提を批判的に検討する姿勢の重要性が示されました。グループディスカッションを通じても、多角的な視点から課題を考察する機会が設けられ、哲学的思考を実践的に学ぶ講義となりました。
(16期生・長坂ソフィア怜)
