南海トラフの巨大地震と富士山の活動(尾池 和夫 京都造形芸術大学 学長)
長年、地震学を研究してきた尾池先生の講義。
まずは、近年、世界各地で起こっている火山の噴火や気候変動について紹介。
マントルや巨大地震発生域への大深度掘削を可能にした球深部探査船「ちきゅう」についても触れ、「渡部先生の“宇宙”はロケットを飛ばせば見えるけど、地球の中は見られない。その点、宇宙はうらやましいなと思う。」と笑いました。
次に、先生の自己紹介として、現在取り組んでいる様々な研究を紹介。
明治時代まで教科としてあった、地球と人の関係を学ぶ学問「地文学」を復刻させようという活動や、ジオ多様性の研究、また、人類とかかわりが深い太陽や月の役割などについて話をされました。
続いて、先生の専門である「地震」について。
まずは、世界各地の様々な地質を紹介。安定大陸で、地震がほとんど起きないスウェーデンの首都・ストックホルムは、岩盤の地面。町を開発するためにダイナマイトが発明されたと言います。一方、変動帯にある中国の敦煌は、大地が割れる、ずれるといった動き回る大地のため、多彩な地層を見ることができます。日本も変動帯に位置します。
そして、2011年3月11日に発生した東日本大震災についても紹介。
「この地震では、阪神大震災の経験から、地震の前兆や揺れの広がりなどを様々なデータを残すことができ、世界中の研究者に役立てられている。大変な被害が起きたが、記録をしっかり残せた点については近年の日本の最大の功績だろうと思う。」と尾池先生は話します。
日本の周辺は、4枚のプレートが集まって押し合いをしており、それによって日本列島は縮んでいる状態。それが元に戻ろうとすると地震が起きます。
地震との共存を余儀なくされている日本。その一方で、四季折々の変化など豊かな気候風土に恵まれています。こうした環境だからこそ、季語と俳句が生まれたと尾池先生。
また、中国になく日本独自の漢字「国字」には、木へんや魚へんが多く使われていたり、「峠」は、日本の地形を表しているなど、日本独自の風土が表れていると言います。
現在塾生たちがいる静岡県の伊豆半島は、もともとは島で、100万年程前に本州にくっついたもの。日本で一番最近仲間入りした部分だそうです。
尾池先生は、「伊豆半島では様々な景色を見られるので、ぜひ見てほしい」と話しました。
最後に、尾池先生は、「未来の人が地層を見たとき、戦争の跡やごみとかが出てきたら恥ずかしいから、きれいな化石を残しましょう。これからのみんなの課題になると思います。」と話し、講義を締めくくりました。
(事務局 大野)
講義を動画でご覧いただけます。
映像の公開は終了しました。(23.8.28)
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