君たちのFuturability~待ち遠しくなる未来~(澤 芳樹 大阪大学大学院 教授)
2時限目は、大阪大学で心臓を専門に臨床、研究を続けてこられ、重症心不全に対する再生医療製品、自己筋芽細胞シート「ハートシート」を開発された澤芳樹先生の講義です。
1時限目を担当された鈴木寛先生とは20年来の仲だそうで、「馬が合うんだよね。鈴木先生の、現状の中から突き進むポテンシャルに惹かれて。」とにこやかに講義を始められました。
阪大病院のキャッチコピー、“futurability〜待ち遠しくなる未来〜”をテーマに、先生ご自身の経験や、阪大医学部の前身である適塾の創始者、緒方洪庵先生らの言葉を交えながら話してくださいます。
心臓は、1日に10万回も拍動し、血液を全身に送り出している。そして、それを90年以上もの間絶え間なく続ける。先生はその精巧さに魅せられたとのこと。しかし、その精巧さゆえ少しの不具合で重大な心不全が起こってしまう。医師として働く中で、多くの人々を助けつつも、医療の限界に苦しみ、打開策を模索してきたと言います。日本では、倫理面の問題等で心臓移植が伸び悩んだため、新技術の再生医療を心臓分野で用いることの必要性から「ハートシート」というイノベーションが生まれました。
次は、阪大医学部の独特な成り立ちについて。
阪大医学部は緒方洪庵先生の私塾である適塾が前身です。福沢諭吉ら近代日本の国家形成に関わる人材を多く輩出したという適塾の背景を用い、リーダーとして人を育てることの重要性に言及されました。また、「世のため 人のため 道のため」という緒方洪庵先生の言葉を紹介し、人を助けたいという思いから患者に尽くす澤先生自身の思いを話されました。
そして、これらイノベーションとリーダーシップが、“futurabiity”を作っていくとまとめました。様々な視点からのお話に、塾生は必死で頭を働かせていました。
最後に、まず何が必要とされているかを考え、何をしたいのかを決め、そしてそれを実行する方法を学ぶように、と強くおっしゃった澤先生。
「君はリスクを取れるリーダーになれるか?」そう塾生に問いかけ講義を締めくくりました。その問いを受け止めた塾生の顔は、責任で少し引き締まったように感じました。
質疑応答では、「臓器移植においては、脳死を人の死と定義するが、細胞の死こそ定義になるべきでは?」などの質問に、ていねいに答えてくださいました。
(9期 末尾 光多)
講義を動画でご覧いただけます。
映像の公開は終了しました。(23.8.28)
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