医学と科学:さまざまな考え方を理解する(永井 良三 自治医科大学 学長)
4時限目、永井先生による講義のテーマは、医学と科学。一見、医学は科学で成り立っているように思えますが、はたして…。今回はそれらの共通点および相違点に迫っていきます。
まず、「人間は知を欲する」という人間の本質に関するアリストテレスの考えに触れつつ、科学の根本である、仮説から実証の流れの重要性を強調されました。
同時に、日本の学生は、自分で仮説から組み立て、それを改良していく習慣を持っていないという現状に危惧を示しました。そして、西村先生のグループ協議にも触れ、「仮説を立ててチームで話し合い、実証していくことを身につけてほしい」と塾生にアドバイスされました。
続いて、ヘモグロビンの青色を吸収しやすい性質を利用し、青色レーザーを用いて血管だけを写すことができる技術などを紹介し、医学と科学のつながりについて言及されました。
科学においても、医学においても、仮説から実証の流れは共通です。
しかし、「医学においては、実験してみると予想外の発見を得られる事が多い、それが医学の面白さです。」とご自身の経験から語られます。
理屈で考えても理解できないような結果が得られてしまうのが、医学。その結果から、正しい理屈がわかるようになる。こういった統計的理解をはじめ、患者さんの立場に寄り添うこと、倫理的知見、そしてそれらを“統合する智恵”。これらが必要とされる点で、医学は科学とは一線を画すると、永井先生は話されました。
「医師になりたい人は?研究者になりたい人は?」と先生が問いかけると、多くの手が挙がります。もうすでに将来の夢が固まっている人も、まだ具体的に決まっていない人も、科学に限らず、多方面に関心を広げ、“統合的”に考えられるようになってほしいと期待を込めて講義を締めくくられました。
(9期 末尾 光多)