身近に隠れている色の探究(小原 洋平 東京都立小石川中等教育学校)

本日3つ目の実験は、「身近に隠れている色の探究」。
まずは、テレビや計算機などのディスプレイに使われている「液晶」について。液晶とは物質の名前ではなく、固体や液体と同じ「物質の状態」です。

「では、液晶を作ってみましょう」
食品添加物の増粘剤などに使用されるヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の粉末に、少量の水を加えて撹拌します。「混ざらない」と言いながらも、しばらく混ぜるうちに「色が変わった」との声がちらほらと上がりました。なお、作製した液晶が完全な液晶状態になるには2-3か月かかるため、「ぜひ家に持ち帰って観察してください」とのことでした。

今回作った液晶は、多層構造を持ちます。この層構造により光の干渉が生じ、色が見えるのです。このように、色素ではなく構造によって見える色を「構造色」と言います。身近な構造色としては、鳩の羽やシャボン玉、DVDなどがあります。

チタンは透明な酸化被膜を持ち、この皮膜が構造色を作ります。
次は、水の電気分解を利用して酸化被膜を形成する陽極酸化の実験です。陽極酸化の際に加える電圧を変えると、酸化被膜の厚さが変わり、色が変わることが確認できます。

この性質を利用し、チタン板に思い思いの模様をつけてみることに。塾生たちのお土産になりました。

 

構造色でない色は色素によって作られます。色素には染料と顔料があり、顔料は金属の化合物により発色します。
「かつては、鉱物を砕いて顔料を作りました。緑青という顔料は、クジャク石 (マラカイト) が原料です。それでは、クジャク石は何の金属元素を含むか調べてみましょう」と先生。

クジャク石を硫酸で溶かし、鉄くぎを加えると、銅が析出しました。さらに、先生は「葛飾北斎の浮世絵に用いられた青色も鉄を由来としています」と、「ベルリン藍」の作製を実演して見せ、塾生たちの感嘆の声を集めていました。

小原先生は最後に、「どんな応用も小さい基礎の積み重ねによって成り立っています。分からないことがあったときは、調べることで、今まであった知識がどんどんつながっていきます。基礎の知識の色々な組み合わせや応用を考えながら今後勉強に励んでください。」と塾生に言葉を送り、実験を締めくくりました。

(4期 高倉 隼人)