考えよう、なぜそうなるのか?(山口 晃弘 品川区立八潮学園 校長)
身の回りに潜む確率から、面白い世界を考えましょう。
最初のテーマは、誕生日について。
まずは、自己紹介のゲームを兼ねて、身振り手振りのみで自らの誕生日を他者に推測させ、誕生日順に並んでみました。
するとどうでしょう。
40人の中に、1組、同じ誕生日が見つかりました。
その確率は、総人数が2人の時は、約0.3%、3人の時は約0.8%、4人の時は約1.6%と増加し、23人の時に50%を超え、40人では約89%となります。
複雑な計算も、余事象(ある事象に対して、それが起こらないという事象のこと)で考えると良い、と山口先生は助言されました。
このような確率の計算は生産過程における欠陥品の出現などの予想に応用できます。昨今話題となっているAIや統計も、様々な確率の計算から発展したものです。過去のデータから現在を予測する、また、現在のデータから未来を予測する面白さは、案外身近な計算からも知ることができます。
次のテーマは物理実験です。風防付き精密電子天秤を用いて蒸発の速度を比較する実験を行いました。天秤の上に対象物を乗せ、短時間の変化を観察したところ、重量の減少速度は、
「紙コップに入った水」<「水を含めたティッシュ」<「アルコールを含めたティッシュ」となりました。
これは、水分子が大気中に拡散する速度が、表面積が大きい方が速いことと、アルコールの水素結合による分子間力が、水より弱いことなどが影響しているためです。
塾生達は実験の結果について真剣に考え、風防付き精密電子天秤を用いて行ってみたい実験を聞かれると、「スチールウール」「シリカゲル」「保冷剤」「電池」など何人も手が挙がりました。
最後に、化学実験。
重曹とクエン酸を手のひらに乗せて、混ぜただけでは何の変化も起こりませんが、水を滴下すると、気体の泡が生じ、手のひらが冷たく感じます。この理由を自分なりに考察してみようという宿題を残し、講義は最終章へと進みました。
「事物事象を科学的に捉えることは面白い」というメッセージを伝えるために、山口先生は、私が3期生として参加した前年から毎年、創造性の育成塾にて教鞭を取られています。
先生の実験は、”一人一人が結果を可視化できること”、”なぜそのような結果となるのかを考えられること”をポイントとして、常に発見があるようにメニューが考えられています。特に身近な現象から、理学的な世界を覗くことができることがとても興味深いと思います。
(3期 奥村 有紗)