考える力の鍛え方(上田 正仁 東京大学大学院 理学系研究科物理学専科 教授)
「考える力は意識的かつ不断の努力で鍛えられる。」というメッセージから、上田正仁先生は講義を始められました。では、考える力はどのように鍛えたら良いのでしょうか。
「考えること」は、日々の鍛錬の積み重ねが必要な点、基礎から段階的にレベルを上げる点、使うのを止めると衰えてしまう点、そして、習慣として身につくと継続して行うことが楽しく感じるようになる点など、「筋トレ」との共通点が見られるといいます。
優秀さの評価基準は、高校、大学、大学院・社会以降で大きく変わることも説明されました。大学入試までは「マニュアル力」が重要視され、大学では「考える力」が要求され、大学院や社会では「創造力」が問われます。人生の各段階で、優秀さの評価基準が突然変化することを正しく理解し、心の準備と努力の意識を持ち、3つの「力」を総合的に持ち合わせ活用することが、最後まで伸び続ける人の秘訣だと話されました。
まず、「マニュアル力」とはすなわち正しい手順にしたがって解くスキルのことです。偏差値も学力の一部であり、サプライズはありませんが、質の保証という安心感が確立でき、リピーターの確保につながる評価基準です。学問において、言語や思考法の基本パターンを学ぶ際には「マニュアル力」は重要です。
次に「考える力」とは、一つの問題を長時間考えて答えに辿り着く力です。「大学・社会では、数週間〜数ヶ月も一つの問題に粘り強く取り組める人が評価される」と、上田先生はおっしゃいます。与えられた問題を素早く解く力は、短時間思考の訓練により鍛えられるものですが、時間がかかっても最後まで考え抜く根気強さと本質を見抜く力は、意識を向けて取り組まなければ身につけることが困難です。
最後に「創造力」とは、自ら課題を見つけて、独自の解決策を編み出す力のことです。答えが存在するかどうかも分からない問題に対し、独自に答えを見いだすことができる力が、社会で問われます。自然科学も同様に、正解はおろか、誰も疑問にすら感じなかったところに課題を発見し、それに対して独自の答えを見出せることが非常に大切である、という上田先生の言葉に、塾生達は興味深く集中して聞き入っていました。
そして、考える力の基礎はマニュアル力であり、創造力を発揮するためには考える力が必要になります。3つの力は相互に密接に関連しており、常に総合力を磨くことが求められます。
上田先生は、塾生達に「考える力」の鍛え方を助言されました。自分が分からない部分がどこなのか、疑問点を具体的に持ち、丹念な調査と関係性の明確化を行うことにより、情報(Information)を知恵(Intelligence)に変えていくことができます。そのような情報処理能力の向上と、分からないことの中で何に取り組むか、といったテーマの選択力が、重要だとお話しされました。困難にあった時の対処の仕方や姿勢は大切だと感じました。
最後に、物理学の天才・アインシュタインを例に挙げ、「頭脳でアインシュタインと同等の人はいるが、アインシュタインほど“諦めない人”はめったにいません。成功の究極の鍵は、諦めない人間力だと思います。」と塾生達にメッセージを送られました。
(3期 奥村 有紗)
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映像の公開は終了しました。(23.8.28)
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