閉塾式 (有馬 朗人 塾長)

第14回創造性の育成塾の最後の時間は、有馬 朗人 塾長による講義と閉塾式です。
講義は、初日の「基本粒子を求めて」の復習から始まります。

有馬先生は、「あらゆる粒子は粒子であるとともに波の性質をもつこと、そしてあらゆる光は波であり粒子であるという二重性をもっていること、これら2つの内容をこの講義では一番覚えておいてほしい」として、物理界における基本的かつ大きな発見について語り始めます。

有馬先生は講義の中で、原子を構成する陽子や電子に加え、素粒子やクォークといった粒子の性質や振る舞いが、歴代の偉大な科学者たちによってどのように予言・実証されてきたのか、各々の研究者にまつわる具体的なエピソードを交えつつ、物理学にまつわる壮大な歴史を紹介していきます。お話の中では、日本の素粒子物理学を牽引した仁科芳雄先生や日本人で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹先生、さらには、育成塾でも講演されたことがある小林誠先生や益川敏英先生など、多くの日本人物理学者が登場しました。

有馬先生は塾生の目をしっかりと見ながら、物理学に対する熱意と思いを込めて講義を進めていきます。後半では2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎先生、小林誠先生、そして益川敏英先生の3名の研究ストーリーが詳しく紹介されました。わずかな対称性の破れを発見した日本人・中国人の科学者を紹介した後、有馬先生は西欧人と日本人・中国人の違いとして、西欧の庭園は左右対称に作られている一方、日本庭園は自然との調和を重視して左右非対称になっていることを例に挙げ、芸術でも物理でも“対称性”に対する感覚の違いがみられることを指摘。日本人や中国人が対称性の破れを簡単に受け入れられたのは、そうした自然風土に根付いた対称性への感覚の違いが関係していると先生は話されました。

講義の最後には、近年の論文数に関する世界的動向を紹介し、「現在はアジアの時代である」と宣言します。近年、科学技術分野で急成長を遂げる中国をはじめ、日本や韓国、ベトナムやシンガポールなどアジア各国の成果を集めれば欧米を超えられると有馬先生は言います。「この世界にはまだまだ面白い問題がたくさんあるので、大きな志と夢を持って活躍してください」と講義を締めくくりました。

そして、講義の後は閉塾式。夏合宿を無事に乗り越えた40名の塾生一人ひとりに対して、有馬塾長から修了証が手渡されました。

私は、研究生活を本格的にスタートした大学院生として参加した今年の夏合宿では、第一線で活躍される先生方の言葉の重みを今まで以上に強く感じました。修了証を受け取った14期の塾生も、今日から育成塾OBOGとなります。これからの活躍を期待するとともに、いつの日かOBOGとして夏合宿に再び戻ってくることを楽しみにしています。

(5期 土山 絢子)

 

videocam講義を動画でご覧いただけます。

映像の公開は終了しました。(23.8.28)

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