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 永井 良三 先生
 自治医科大学 学長

 「医学研究に必要な理科」

 


 昼食後は永井先生による「医学と科学」の授業でした。
心筋に関する分子生物学の話題を中心に、研究技術に対する姿勢や科学と社会の関係についてもお話を頂きました。

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まずは、ヒトの身体を構成するタンパク質の作り方について。
初めに「設計図(DNA)」から「コピー(RNA)」が作られ、その「コピー」を元にして「材料(アミノ酸)」が繋げられていくことで、タンパク質になるとのことでした。この仕組みをより詳細に紐解けば様々な病気を治せる可能性もあるとのこと。

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次に、筋肉の分子の世界で起きていることについて。筋肉は、分子レベルでは、アクチンとミオシンから成り立っており、この分子が互いに噛み合って収縮することで筋肉は力を発揮するようになるとのことでした。また、筋肉には長距離型と短距離型があり、筋肉でできている心臓も同じで、長距離型と短距離型の筋肉の組み合わせから成り立っているとのこと。

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そして、先生は、「平滑筋(主に腸や血管に分布する筋肉)と骨格筋(腕や太ももに分布する筋肉)の違いは何か?」という根源的な疑問から始まって、平滑筋の成分を分子レベルで調べていくうちに、動脈硬化では胎児の時のみ存在する平滑筋の成分が発生してくることを発見しました。また、この平滑筋の成分の生成を促進する物質について詳しく調べたところ、心筋を構成する心筋細胞と繊維芽細胞の細胞間のコミュニケーションや、心臓と腎臓の臓器間のコミュニケーション(!)に寄与していたと永井先生。

先生は様々な技術を用いたこのような実験の結果を示しながら、技術をただ覚えるのではなく、その技術の理屈を理解して使いこなすのが重要だとおっしゃっていました。また、宇宙ステーション(無重力下)でタンパク質を結晶化し構造解析することによる新たな創薬や、数理科学を応用した心臓の収縮の3Dシミュレーションなどの例も挙げて、これらの最先端の技術を理解するためには、生物だけでなく、物理や数学も必要だとのこと。

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最後に、失敗に終わってしまった不整脈の薬の例に触れながら、正しいと思っていた理屈で実際にやってみると、実は間違っていて本当の理屈が実際にやってみた後からわかるということが多いことを指摘されていました。そのため、「理屈は万能ではない」と謙虚な姿勢で、生命に関する研究を行う必要があるとアドバイスを頂きました。また、実際の社会の集団の中で、「理屈の正しさ」を評価しなければならないので、生命科学の研究の最も基礎の部分には倫理や哲学が必要だという話で講義を締めくくられていました。

 (2期生 貴田浩之)

 


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【講師ご紹介】

現職: 自治医科大学・学長

略歴: 昭和49年 東京大学医学部医学科卒業
    昭和58年 University of Vermont, Department of Physiology and Biophysics
(Professor Norman Alpert),Visiting Assistant Professor
平成 3年 東京大学医学部第三内科講師
平成 5年 東京大学医学部第三内科助教授
平成 7年 群馬大学医学部第二内科教授
平成11年 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻循環器内科教授
平成15年 東京大学医学部附属病院長
平成21年 最先端研究開発支援プログラム「未解決のがんと心臓病を
撲滅する最適医療開発」中心研究者
東京大学トランスレーショナルリサーチ機構長
平成24年 自治医科大学学長

研究内容(業績)
心臓病の臨床医として仕事をしながら、心臓・血管や代謝システムの分子生物学を
開拓してきた。