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 中村 桂子 先生
 JT生命誌研究館 館長

 「生命誌(Biohistory)という新しい知

 


中村桂子先生の講義のテーマは「生命誌」についてです。
身近な昆虫やクモを例に挙げながら、生命とは何か、生命のことを考える意義は何かについてお話を頂きました。

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まずは生命誌とは何か?というお話。
よく「地球にやさしく」「地球がかわいそう」という言葉が聞かれますが、そもそも人間も地球の一部で他の生物と対等のはずです。そこで「人間も他の生物と同等である」ことを前提に、これらの生物がどのようにして現在の在り方になったのかを研究するのが生命誌です。

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初めにオサムシという羽を持たない昆虫について。オサムシは日本全国の地域ごとに4種類が分布しています。なぜ異なる種類が分布しているかというと、なんと大昔の日本大陸の地殻変動と関係が!
元々、1種類だったオサムシは、アジア大陸から離れた4つの陸地に分かれ別々の進化を遂げました。その後、4つの陸地が合体し日本列島を形成。その名残が、今の分布に残っているそうです。これは、中村先生が地質学者の方と話して解ったことで、本当に「生物」を知りたければ、「自然」そのもの、つまり、物理や化学、地学などすべての知識が必要だとおっしゃっていました。

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続いては、ミカンの葉にタマゴを産むアゲハチョウが、ミカンを認識する仕組みについて。
アゲハチョウは脚の先をミカンの葉に刺して、ミカンの成分を感じ取っているのですが、実は、この脚の先の仕組みはヒトの味を感じる仕組み(味蕾)と全く同じ(!)とのこと。しかしながら、「なぜミカンなのか」といった疑問は未だに解決しておらず、科学は“Why“を答えるのが苦手だと指摘もされていました。

次にクモの体の出来方について。一般的に、生物は受精卵からその子ども(胎生)の形になっていく時に体に「節(体節)」が出来てきます。
クモの「節」の出来方は、体の部分によって異なっています。頭の部分はクモに特有の方法で出来てくるのですが、胸の部分はショウジョウバエと、尾っぽの部分は、ヒトと似た方法で「節」が出来てくるとのこと。

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現在、生命科学では、生物の「構成品」を調べる研究が多い一方、生命誌は、生物がどのように生まれてくるのか、種の間にはどのような繋がりがあるのかを考える学問であると中村先生。
そして、こうして自分の中の「?」や「!」を考えていくことを通じて、自分の生き方に活かすことに意味があると話しました。

 

 中村先生は、塾生からの多数の質問にも1つ1つ丁寧に答えてくださりました。
「地球外生命体についてはどう考えますか」という塾生(彼女は地球外生命体を見つける夢を実現するために育成塾に参加したそうです)からの質問に対して、「現在は地球に存在する生物と似たような生物を探しているが、実際には私たちが全く知らない生物がいる可能性がある。大変だと思うがぜひ頑張ってほしい」とエールを送りました。

(2期生 貴田浩之)

 


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【講師ご紹介】

現職 JT生命誌研究館館長
略歴
東京大学理学部化学科卒業、東京大学大学院生物化学専攻博士課程修了(理学博士)。
国立予防衛生研究所、三菱化成生命科学研究所人間自然研究部長、早稲田大学人間科学部教授、JT生命誌研究館副館長を経て現在館長。東京大学先端科学技術研究センター客員教授、大阪大学連携大学院教授も歴任。
受賞歴
第47回毎日出版文化賞、第12回日刊工業新聞 技術・科学図書文化賞優秀賞、第8回松下幸之助花の万博記念賞、15回ダイヤモンドレディ賞、オメガ・アワード2002、第10回大阪府女性基金プリムラ大賞、第45回大阪文化賞、平成24年度アカデミア賞文化部門 など受賞。

2002年 第六回松尾学術賞
2007年 文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)
2008年 仁科記念賞
第5回(平成20年度)日本学術振興会賞
2011 Americal Physical Society Outstanding Referee Awards