8月2日 (土) 1時限目 「事実は小説より奇なり~量子の世界への誘い」

 09:00~

 上田 正仁 先生
東京大学教授 (物理学)

 

 


2日目最初は上田先生による現代物理についての講義。しかし、講義というよりは、先生が普段大学でされているように、塾生との「対話」を通じて大学院生レベル(!)の内容を解説して頂きました。
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まずは、昨日の鈴木寛先生の授業内で挙げられた、「時間とは何かを明らかにしたい」という塾生の目標を元にして「時間」について考えることに。
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原子時計は10億年に1秒狂うという超高精度の時計です。しかし、筑波にある原子時計と東京にある原子時計ではかなりの誤差が。これは重力によって原子の動きが曲がってしまうためだとのことです。
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例えば平らなソファに重りを載せるとソファの表面は歪み、ソファの表面に物体を置くと重りがある方に転がり落ちていきます。宇宙にもこの「ソファ」のようなものがあり、大きな「重り」があると、光はそちらの方に曲がっていくとのこと(しかし、光自身は真っ直ぐ進んでいるように感じているらしいです)。
ちなみに、光さえ吸い込んでしまい本来目には見えないはずのブラックホールを認識できるのは、ブラックホールが作る「歪み」により光が曲がることを利用しているためだそうです。
このような流れで、時計のことを考えていたらなんと、お話が「相対論」にまで辿り着きました。上田先生曰く、このようなことを理解する「柔軟性」は既に中学生に備わっているとのこと。

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続いては「量子論」についてのお話でした。「量子論」とは、光や電子において、「粒子」としての性質と「波」としての性質を統一して考えようという理論です。
一般的に二方向からの波は干渉をし合い、この時「干渉縞」と言う現象が起こります。二重スリットという装置に光を通すと、「波」の性質を示す干渉縞を形成します。それに加え、ある条件では、スリットを通り抜けた光は輝く「点」として観察されるので、光には「粒子」としての性質(光子)もあると言えます。また、この輝く「点」をある時間で積算していくと干渉縞になっていきます。つまり、光は「粒子」としての性質と「波」としての性質を両方持つ(!)ことになるそうです。
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このような干渉縞を形成するには理論上、2つのスリットに同時に光子が入る必要があります。しかし光子はランダムに動くので、2つのスリットに同時に光子が入るということは不自然にも感じます。このことに疑問を持った物理学者たちは実験を重ねていますが、まだ完全にはわかっていないそうです。
例えば、2つのスリットのうち、片方のスリットの部分に検出器を置いて、スリットを通過する光子の数を数えようとすると干渉縞ができなくなる、という不思議な現象が知られていますが、解明には至っていません。
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最後に「創造性をどう育成するか」というお話。上田先生は「夢とあこがれを持つこと」「必死に追及すること」「最後まで諦めないこと」の3点を挙げました。浪人をしたり、物理に関係のない就職をしたりと逆境が長かったアインシュタインの例を用いて、3番目の「最後まで諦めないこと」は特に重要であり、まずは10年間は頑張って研究をしてみようという力強いアドバイスを頂きました。

(2期生 貴田浩之)

 


※授業の動画の公開は終了しました。


 

【講師ご紹介】

東京大学大学院理学系研究科(物理学専科)教授。1988年東京大学理学系研究科修士課程卒、博士(理学、東京大学)。NTT基礎研究所研究員、広島大学工学部助教授、東京工業大学教授等を経て、2008年より現職。2012年から駒場の教養課程で「基礎方程式とその意味を考える」を開講。大学に入ったばかりの1、2年生を対象にこれから進むべき指針となる「人生の基礎方程式」を説き、自由闊達に質問が飛び交う対話形式の講義は心揺さぶられ、ためになる授業として大きな反響を呼んでいる。

1963年大阪生まれ。主な著書:「東大物理学者が教える「考える力」の 鍛え方」(ブックマン社)。

2002年 第六回松尾学術賞
2007年 文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)
2008年 仁科記念賞
第5回(平成20年度)日本学術振興会賞
2011 Americal Physical Society Outstanding Referee Awards