8月4日 (月) 5時限目 「宇宙生命は存在するか? ―天文学からのアプローチ ―」

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 渡部 潤一 先生
自然科学研究機構国立天文台 副台長

 「宇宙生命は存在するか?
―天文学からのアプローチ ―」

 


冒頭、渡部先生は、「地球外生命がいると思う人?」と塾生たちに問いかけました。
何人も手を挙げる中、「人類究極の謎のひとつだが、天文学の研究が進みつつあり、おそらくもうすぐ答えが出る。」と、講義をスタートしました。

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まず、地球外生命を見つけるためのいくつかのアプローチを示し、これらをひも解く形で講義を進めます。
最初に挙げられたのは、「生命を育む材料は?」というものです。我々は、炭素、窒素、酸素などを基本として出来ており、「これらは星から生まれ、宇宙にはいくらでもある。」と渡部先生。塾生たちにこまめに質問しながら、テンポよく講義を進めていきます。

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次に「地球のような水の惑星は他にもあるのか?」という問題。太陽系には、地球の他に表面に水がある惑星はありません。では、もっと遠くの星はどうでしょう?現在は望遠鏡が進化し、かなり遠くまで観測できるようになったとのこと。地球にそっくりな惑星や、海を持つ可能性がある惑星も発見されているそうです。

そして「水の惑星には、生命は生まれているか?」については、酸素やオゾン、葉緑体など生命がいれば発生するはずの元素をもとに、その有無を探査しているとのこと。これらのことから、「どの星で何を探せばいいかはわかっている。あとは観測機器を作るだけ。答えは、ほんのすぐ近くまで来ています。」と渡部先生は言います。

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「どの生命でも進化して文明を持つのか?」という問題には、「これは全く予想が付きません」と笑う渡部先生。「しかし天文学者は、予想がつかないからやめようと思いません。」と言い、すでに始まっている電波による知的生命探査について紹介しました。

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まとめに、「大人になるということは、他の人の存在を理解するということ。」と渡部先生。宇宙における人類は、ようやく他の存在を認識しようという段階で、やっと大人になりかけた状態だと言います。その意味で、人類は知的文明としては未熟で、他の文明はもっと進んでいるはずと話し、塾生たちはまだ見ぬ地球外生命に思いを馳せました。

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講義の最後は、屋外での天体観測。
空には雲が広がっており、あいにくのコンディションながら、月や土星がほんの少しだけ観察できました。

(事務局 大野涼子)

 


※授業の動画の公開は終了しました。


【講師ご紹介】

総合研究大学院大学数物科学研究科天文科学専攻教授、理学博士。

1960年 福島県会津若松市生まれ。福島県立会津高等学校卒。東京大学理学部天文学科卒。
1987年 東京大学東京天文台助手、国立天文台・光学赤外線天文学研究系・助手、同広報普及室長、天文情報センター長、教授を経て、2012年より現職。
太陽系の中の小さな天体(彗星、小惑星、流星など)の観測的研究。特に彗星・流星を中心に太陽系構造の進化に迫る。国際天文学連合では、惑星定義委員として案の策定に従事し、準惑星という新しいカテゴリーを誕生させた。一方で、天文学の広報普及活動に尽力している。

著書など:
「太陽系の果てを探る」(東京大学出版、布施哲治氏と共著、2004)
「新しい太陽系」(新潮社新潮新書、2007年)
「ガリレオがひらいた宇宙のとびら」(旬報社、2008年)
「星空からはじまる天文学入門」(化学同人、2009年)
「天体写真でひもとく 宇宙のふしぎ」(ソフトバンククリエィティブ・サイエンスアイ新書、2009年)
「天文・宇宙の科学 恒星・銀河系内」、「天文・宇宙の科学 宇宙・銀河系外」
「天文・宇宙の科学 太陽系・惑星科学」、「天文・宇宙の科学 天体観測入門」(大日本図書、2012年)
「面白いほど宇宙がわかる15の言の葉」(小学館101新書、2012年)
「大彗星、現る」 (吉田誠一、渡部潤一共著、KKベストセラーズ)
「巨大彗星-アイソン彗星がやってくる」(渡部潤一、誠文堂新光社、2013年)

受賞歴:
1997年日経サイエンス25周年記念論文賞最優秀賞受賞
2008年  平成20年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(理解増進部門)
「新しい惑星定義の理解増進ならびに普及啓発」