8月5日 (月) 4時限目 「わたしたちの生活に役立ち始めたバイオマス化学品」
松村 晴雄 先生
(株)旭リサーチセンター 常務取締役主席研究員
講義を始めるにあたって、松村先生はまず正面に写真を映して、「ここはどこでしょう」と問いかけました。
青い空、奥行きのあるU字谷…「ここはヨセミテです。自然が豊かなところなので、みなさんも若いうちに行っておくといいでしょう」と松村先生。
そして本題。まずは、バイオマスの定義を紹介します。
「バイオマス」を文字通りに捉えれば、生物の量という意味になりますが、実際には、「再生可能な生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」として捉えられています。バイオマス化学品は、光合成で植物が吸収した二酸化炭素を利用しているために、大気中の二酸化炭素を増加させることはありません。近年は、トウモロコシからバイオエタノールを作ったり、植物由来のプラスチック製品が使われたりするようになり、“環境に優しい”というイメージもあります。
しかし先生は、「環境によいものかどうかは、客観的に判断しなければいけない」と警鐘を鳴らします。たとえば、植物から作られるバイオエタノール燃料は、原料を確保するために森林を切り開いてトウモロコシ畑を作ってしまうと、むしろ森林の二酸化炭素吸収が減った分だけ環境に負荷をかけることになります。植物由来のプラスチックも、全てが生分解性ではないので、適切なリサイクルを施す必要があります。
日本における石油の用途を見てみると、その20%が化学用原料であるため、今後バイオマス由来のプラスチック生産量が増加すれば、僅かながらでも石油の節約ができるだろうと、松村先生は言います。また、バイオマス化学品は必ずしも環境に優しくないので、リサイクルはなおさら重要になっていくだろうと、念を押しました。
「一つ問題を解決するとまた違った問題が出てくる」。研究に取り組む大変さを松村先生が語り、塾生は環境問題に対するやりがいを身近に感じ取ることができたようです。
(1期生 佐々木駿)
※授業の動画の公開は終了しました。
【講師ご紹介】
●略歴
1982年 東京大学 工系大学院 工業化学科 修士 卒業
1982年 旭化成(株)(旧:旭化成工業(株)) 入社
1996年 旭化成アメリカ(株)駐在
1998年 (株)旭リサーチセンター
2010年7月より現職
●著書
「特許Q&A大全集~電気・化学」情報機構、2007年(分担執筆)
「最新透明導電膜大全集」情報機構、2007年(分担執筆)
「LED革新のための最新技術と展望」情報機構、2008年(分担執筆)
「プラズモン基礎理解の徹底と応用展開」情報機構、2011年(分担執筆)