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科学オリンピックに見る世界の中の日本(下)
【第4回】 2008年1月11日

オリンピックの開催時期
まず1つめは、科学オリンピックが、毎年7・8月に開催されること。この時期、日本では学年が改まり、3~4ヶ月を迎えた頃です。科学オリンピックに出場できる最高学年は高等教育に当たる学校の最終学年。

そのため、日本から出場できるのは高校3年生になって3~4ヶ月経った生徒達です。しかし、海外では9月に学年が改まるのが一般的。すると、科学オリンピックに出場できる最高学年は、高校を卒業し、9月の大学入学を待っている夏休み中の高校3年生ということになります。

このように、海外と日本の出場選手には、1年弱の差があります。特に生物学のような知識を蓄積するような学問では、この1年弱の差はとても大きいそうです。

他国に比べて少ないインセンティブ
もう1つは、各国の、科学オリンピックに対する認識や、科学自体に対する意識の浸透具合の差です。例えば、アジア諸国には、科学オリンピックの金メダル受賞者に、その後10年間の学習環境の保障(例えばタイでは4000万円の奨学金など)をするところがあります。

また、多額の奨学金や、出場に際する生徒の学校の協力、また大学への優先入学など、国を挙げての協力が得られます。それらの国で(発展途上国などでは特に)科学オリンピックに出場し、優秀な成績を収めることは、直接、自分自身のその後の学習環境、また生活環境までもの保障を手に入れることになるのです。

それに対し日本では、まだまだ、学校や国の協力が十分とは言えません。オリンピック出場期間の授業の欠席が認められなかったり、オリンピックに向けて特別な学習をする場が十分でなかったり。また、学習環境に恵まれている日本では、オリンピックに出場しなくても、進学して、学習することができます。

そうしたオリンピック出場に対するインセンティブの少なさも、全国の科学好きの生徒のモチベーションの低さに、少なからず関わっているようです。

こうした問題点を踏まえ、必死の取り組みを続ける国際生物学オリンピック日本委員会。
次回以降、これらの問題点の解決方法と取り組みを取り上げます。
(事務局:伊奈恵子)
取材協力:国際生物学オリンピック日本委員会・日本科学技術振興財団
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