インセンティブを増やして挑戦者の視野を広げよう
そしてもうひとつはインセンティブの問題。
これも、他国では、オリンピック出場選手に、国から奨学金が出るなどのその後の学習環境の保障がされていることを紹介しました。日本に現在あるインセンティブは、国内選抜の成績優秀者に一部の大学におけるAO入試(自己推薦入試)の特典が与えられています。しかし特典を受ける生徒は受験校を広く選ぶことはできず、またこの特典も、物理、化学、生物学の国内選抜でしか実施されていません。
こうした現状を動かそうと、最近では、国際オリンピックの選手となる4人だけではなく、国内選抜での成績優秀者の表彰や、賞を贈るなどの取り組みも始まりました。具体的なインセンティブにはまだ結びついていませんが、応募者達の自信や、形に残る成績としてモチベーションに繋がることが期待できます。
こういった多くのインセンティブを設けることで、応募者のモチベーションを上げ、科学オリンピックへの挑戦者を増やすことにも繋がります。東京大学の松田良一准教授は、「国際科学オリンピックにおける日本の成績を伸ばすには、選手に決まった生徒達の成績を伸ばすこと以上に、募集の段階で、より多くの、より優秀な生徒達に応募してきてもらうことが重要」と語ります。
ここ最近の生物学オリンピック国内選抜応募者数は、第17回が547人、18回が963人、そして第19回のインド大会には、1400人と、順調にその数字を伸ばしつつあります。20回となる次の応募者数目標は2000人。目標達成のために、科学オリンピックの知名度を上げ、インセンティブを増やすことでの動機付けが必要です。
国際生物学オリンピック日本委員会では、オリンピック周知の第1歩として、「第20回国際生物学オリンピック(IBO)」(2009年日本・つくばにて開催)の名誉総裁に、秋篠宮殿下をお迎えしました。より多くの科学好き、成績優秀者が集まり、切磋琢磨し、日本全体の科学技術を躍進させる、科学オリンピックは、そのきっかけ作りを目指します。
科学立国を目指す、わが国の科学教育環境は、他の科学教育先進国に比べ、まだまだ後れをとっています。
国、大学、関係各方面が一体となっての取り組みが求められます。 |