第1回夏合宿(関本・有馬塾) ③(8月3日)

「光を追いかける」―光は波か粒子か

 「まず生徒の関心の高さに驚いた」と言ったのは、この日4・5・6・7限目を担当した広井禎先生(中央大学兼任講師)。
広井先生は、「光は粒子であるのか、それとも波であるのか」という問題を軸に、4時間ぶち抜きで授業を展開。これまでに研究者が試みてきたことなどを、実験を交えながら続けた。
光が粒子かどうかというテーマで、赤と青の2つの光を交差させながら、「もし光が粒子であるならば、光がぶつかった時になぜ跳ね返ったりしないんだろう」
光は波なのかという話題について、暗くした室内で、水を満たしたプラスチックケースの下からライトをあて、天井に映写。プラスチックケースの水面に波を起こし、波紋のできかたを実験。
「水の場合は、全体に波紋が広がります。これを見て、(光は波紋だと)驚きの声を挙げた学者がいます。」
教室に続く廊下から、教室に向かって話しかけ、「私の見えないところにいる皆さんにも声が聞こえますか?全員聞こえますね。音は波なので、全員聞こえたと思います。しかし、光は真っ直ぐにしか行きません。
光は本当に波なのでしょうか。光が波だと思っていた人は、またまた問題に突き当たりました。」という調子で、ヒントを示しながら、生徒に考えさせる授業を展開した。
授業の合間には、恒例となった「サインの列」ではなく質問者の列ができていた。
広井先生は「ストーリーをつけさせてもらった。(4時間で)考えを進めていくプロセスを教えたかった。学校の教科書とは違う展開だったが、よく応えてくれた。嬉しい。」と感想を語った。

 

「大きなバランス」で

 本日最後の授業、講話は三村明夫・新日鉄社長の「大きなバランスについて」。
「時間でもお小遣いでも限りがありますね。夏休みは遊びたいけど勉強しなければならない。それを如何にバランスよく解決するか、それがバランスです。
例えば、鉄鋼を使う自動車の場合、運転し易く、安全性という(お客さんからの)要求がある。そうすると、車の重量は増え、燃費も増える。コストも増加する。それを解決するために、軽量化を目指す。エネルギーの消費も少なくしなければならない。この相矛盾するテーマを解決するために、鋼板の改良など技術力の結集に取り組む。これが「大きなバランス」です。その結果、グローバル(世界)に認められる新商品の開発に成功した。
今は、(各メーカーとも)「環境と収益」という二律背反のことが求められている。これをどうやって克服して「大きなバランス」に結び付けるか。
このように、双方を満足させる問題を知恵と技術を突き詰めて実現しなければならない」
と話した。
日本経済を牽引するトップメーカーの経営者らしく、現実のメーカーを取り巻く問題を取り上げて、分かりやすい表現で、科学技術の大切さを説いた。塾生たちは夜遅かったが真剣にメモを取っていた。中には「良く分かった。私は経営センスあるかも」という女の子もいた。

 

新型コースターに絶叫

 この日の午前中は、すぐ近くにある遊園地、富士急ハイランドに行き、グループ毎に園内を回った。
先日お目見えしたばかりの、ジェットコースター「ええじゃないか」などに乗って楽しんだ。
女の子は、怖がって乗らなかったようだが、実際に乗った男の子からは、「動いていたのは1分だったけども想像していたより怖くなかった」と初体験に満足そうだった。

※「スーパー先生と子どもたち」(2006年)の記事を事務局にて再編。再収録しました。

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