「科学を社会に活かす、経営に活かす。全ての原点は『わからないこと』への探求」大久保 昇 内田洋行 代表取締役社長

講義

 1時限目は、株式会社内田洋行代表取締役社長の大久保昇先生の講義です。
「光速に近い速度だと時間の進みが遅くなる。アインシュタインは実験で確かめているわけではないのに、なぜ理論だけで導出できるのか―」先生は塾生たちと同じ中学生の頃、相対性理論に興味を持ち様々な本に読み耽ったそうです。しかし興味は科学だけにとどまらず、新聞を読むなど社会にも目を向けており、このような幅広い関心が元となった自身の経験を塾生たちに熱くお話しいただきました。

 内田洋行は、情報システムや教育システムの構築、オフィス ・学校などの空間設計、理科の実験器具の開発などの事業を手掛けています。
 大久保先生は、京都大学工学部を卒業後、内田洋行に入社。これまで世界各地の学校を訪問した経験や、様々な出会いから感じたことをお話されました。

 先生は多くのノーベル賞受賞者との出会いから、様々なことを学んだそうです。特に、青色発光ダイオードを開発した天野浩氏からは、失敗や偶然をそのまま流さずに、その理由を突き詰めることの重要性を感じたそうです。
 先生は、これまでの経験を活かし、現在、宮崎県立みやざき林業大学校の名誉校長も務めるなど、地方創生にも力を入れています。

 先生は、仕事でしていることとして、「仕事では、正しいとか間違っているとか、はっきり言えないことがたくさんある。だけど、“どうして”と言うのはよく尋ねます。なぜこうなっているのか知りたいんです。これは、やっぱり科学を好きだったからかな。そして自分が納得したら、今度は他の人にも説明する。こういうことは、経営に活かされているなと思います。」と話されました。経営者になり、収益データを様々な角度から見て、会社全体の経営構造を再確認するなど、データを重んじる科学的視点は経営にも生かされているそうです。

 先生は、最後にこのように語ります。「人はすぐに探せる『できない理由』に目を向けがちだが、ぜひ『できる理由』を探してほしい。」そして、そのためには迷路を出口から入口を辿るような、つまり自分の立場とは反対の立場から物事を見るような思考の転換が必要で、「現在の常識が間違っていることは当たり前にあります。だからデータを大切に、常識を疑い自ら考えることを大切にしてほしい。その科学的思考力で社会を豊かにしてください。皆さんの科学的興味、関心、考え方を大切にしながら、周りの人にも伝え波及させてください」と、講義を締め括りました。

 質疑応答では、「今後どのような行動が求められるか具体的に教えてほしい」という質問に対し丁寧に対応してくださいました。
(14期生 橘 祐貴)